第36話

宿泊2
212
2020/03/29 04:20
壱馬ママ
壱馬ママ
泊まって行ったら?
夜10時ぐらい、いつものようにお母様が言った。
ピアノのお稽古から帰ってきたレイちゃんは、そうしなよって言ってくれた。
レイちゃんが帰ってきた時リビングに下りてきたんだけど、もうカイさんはいなかった。

そんな2人が言ってくれる毎回の『泊まって行きなよ』に対していつも決まって、壱馬が『帰す』って言うのが当たり前だった。
川村壱馬
川村壱馬
そうだな
そしたらあたしはまた来ますって笑って……。
そ    う    だ    な    ?
『『『え?』』』


''当たり前’’が変わったことに驚いたのはあたしだけじゃなかった。泊まっていって派の、お母様とレイちゃんも。
レイ
レイ
いいの?壱馬兄
川村壱馬
川村壱馬
いいんじゃね
湯浅愛羅
湯浅愛羅
待って、……ほんとに?
あんなに泊まりたかったのに、いざとなると無性に緊張して戸惑ってしまう。
川村壱馬
川村壱馬
なんだよ。泊まりたかったんじゃなかったのか?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
泊まり、たぃ…
川村壱馬
川村壱馬
じゃあいいじゃねぇか
壱馬はあたしと違って余裕そうで、ずるい。あくびなんかしちゃって、大喜びでへばりつくレイちゃんを軽くかわしてた。
川村壱馬
川村壱馬
風呂
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え!
壱馬がおもむろに立ち上がる。普通にお風呂に入ると言っただけなのに、あたしは過剰に反応してしまい、なんだよって不審がられた。あたしの、『なんでもない』という言葉を聞かずに壱馬は首を傾げながらリビングから出て行った。

壱馬がお風呂に入ってる間、レイちゃんとUNOをして遊んだ。2人でUNOはスキップもリターンも同じだから、ちょっと単純だったけどレイちゃんが嬉しそうだったから、あたしも嬉しくなった。そんなUNOも流石に飽きたのかレイちゃんは唐突に聞いてきた。
レイ
レイ
愛羅ちゃんは、壱馬兄のどこが好き?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ?
壱馬ママ
壱馬ママ
それ私も気になるわ!
どうやら学校に3日で広まったように、2人にもバッチリまわってた。あたしが、ちゃんと付き合うことになったこと。壱馬が自分から言うなんてことはないと思うけど、なんで知ってるのか見当もつかなかった。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ど、どこって?
レイ
レイ
あたしは壱馬兄優しいから好き!
あたしが迷ってる間にレイちゃんはサラッと言いのけた。
壱馬のどこが好きかなんて考えたこともなかった。いつの間にか傍にいたくなってて、いつの間にかヤキモチ妬いちゃうくらい好きだったから…あたしが答えにつまり、考え込んでいると上から冷たい滴が肩に落ちてきた。
川村壱馬
川村壱馬
気になるんだけど。つーか言えねぇのかよ
びっくりした。どうやらお風呂から上がった壱馬があたしの真上から話しかけてるみたいだ。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
きゃっ!
上を見たら思った以上に近くに壱馬の顔があって、超ありきたりなリアクションをしてしまい自分でも恥ずかしかった。
川村壱馬
川村壱馬
次お前入れば?
ガシガシと首にかけたバスタオルで頭を拭く壱馬は、なぜか上半身裸だった。
ソフトマッチョ……いわゆる細マッチョな壱馬は腹筋が見事に割れていて、顔が真っ赤になる自分に気づいていたのに、目を離せなかった。
川村壱馬
川村壱馬
アホ。見すぎだろ
フッと笑う壱馬は、そんなに嫌そうではなくてホッとしたけどとにかく恥ずかしかった。
そんなガン見してたのか……だけどしょうがないと思う。これはずるい。
顔もキレイに整っていて、スタイルまで良くて、リーダーシップもとれて。こんなのずるい。。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
神様め……
川村壱馬
川村壱馬
あ?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え、いや?  なにも?
慌てて立ち上がったら、そのままお風呂に入ることになってしまった。

着替えはお母様がパジャマを貸してくれた。可愛らしい水色のストライプのパジャマはちょっとゆったりサイズで、袖が長かった。

人ん家のお風呂って緊張する。無性に時間がかかるから、ちょっとだけのぼせた。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
お風呂、ありがとうございます
リビングに出るとちょっと涼しくて気持ちよかった。ドライヤーも貸してくれたけどあんまり長いような気がしてちょっとしかしてないから髪はまだちょっと湿っている。
壱馬ママ
壱馬ママ
お湯の温度とか大丈夫だった?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
はい。すみません、長くなっちゃって
お母様と話していたら、視線を感じてそっちを見る。それは、リビングのソファに並んで座る仲良し兄妹からだった。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ん?  なに?
レイ
レイ
愛羅ちゃんって普段お化粧してるの?
急にどうしたんだろ? 
湯浅愛羅
湯浅愛羅
うん、ちょっとだけね
レイちゃんはどこか感心するようにウンウンと頷いていて、あたしはさらに首を傾げる。
レイ
レイ
壱馬兄、すっぴんでこの可愛さはそういないよ!?
川村壱馬
川村壱馬
お前は何様なんだ
すっぴんの話?あ、そういえばすっぴん見られた!!/////やらかしたぁ〜!


……って言っても普段もほんのちょっとしかメイクしてないからあんまり変わらないのかもだけど。。
レイ
レイ
壱馬兄だって見とれてたくせに〜
川村壱馬
川村壱馬
レイ…まじで黙ってろ
すでにのぼせてたのに、さらにのぼせた。完璧な容姿のうえにそういうとこで照れてみせるのは、更にずるいと思う。
川村壱馬
川村壱馬
上に行くか
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え?  あ、うん
まだまだ挙動不審なあたしに、壱馬が呆れたように首を傾げスタスタと歩いていく。

ていうか、いつまで上半身裸なんだこの人は。
2度目の壱馬の部屋には流石に慣れた。座るところも迷ったりせず、ストンと座るとプーさんを抱き上げる。

壱馬は部屋に入るとやっとTシャツを着てくれた。このまま寝る気だったらどうしようかと思っt……あれ?

































あたし今日どこに寝るの?

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