第11話

組織2
274
2020/06/05 16:22
川村壱馬
川村壱馬
朝礼開くぞ
そして、おもむろに壱馬が言う。
空気がフッと変わった気がした。ピリッとして。みんな壱馬に注目した。
これが灰高全校生徒のヘッド……。
トップ
トップ
了解
それに返事をするトップの空気も目も違っていた。
途端、クラスにいたリード達が一斉に携帯で電話し始めた。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え? リードの人たちどうしたの?
浦川翔平
浦川翔平
リーダーに連絡まわしてんだ
翔平が答えてくれた。朝礼開くって言った壱馬の指示を、リードがリーダーにまわして、リーダーがクラスの人達に言うのね。
川村壱馬
川村壱馬
お前もこい
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ?
川村壱馬
川村壱馬
お前のために開くんだろうが
初耳ですけど。
川村壱馬
川村壱馬
んだと?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
いえ! ありがたいです!行きます!
あたしの表情でなんで気持ち読んじゃうかなあ!この人は!
壱馬は呆れたようにため息ついて、ポケットから取り出した煙草をくわえた。高校生なのに、学校なのに、さも当たり前のように吸いだす壱馬に思わず聞いてしまった。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
ねぇ、壱馬
川村壱馬
川村壱馬
ん?
湯浅愛羅
湯浅愛羅
授業ってあるよね?
川村壱馬
川村壱馬
馬鹿じゃねぇの。当たり前だろ
そこは当たり前らしい。。だって、壱馬の力で勝手に転入させたり、朝礼開いたり。バイクで一斉に登校したり、教室で普通にタバコを吸ったり。どれが当たり前でどれが当たり前じゃないのか、もうこんがらがっちゃうよ。。
川村壱馬
川村壱馬
基本の5教科+音楽+美術+体育
湯浅愛羅
湯浅愛羅
へ〜案外ちゃんとあるんだ
川村壱馬
川村壱馬
あぁ。ちゃんと受けろ、鉄則だ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
て、鉄則!?
壱馬は、ん!と教室の後ろを顎で指す。そこはどデカい灰色の布が壁にはられてて、そこに赤い字で書かれている。


灰高 鉄の掟
一,卑怯な手は使うな
一,リンチはしない
一,仲間は守れ
一,一般人は巻き込むな(女子供特に)
一,授業はできるかぎり受ける
一,先生に暴力は禁止


これを考えたのは壱馬なんだと思う。少ししか壱馬のこと知らないけど、壱馬が考えたんだって何となくわかった。
湯浅愛羅
湯浅愛羅
達筆だね、これ
川村壱馬
川村壱馬
だとよ。良かったな樹
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え! 樹が書いたの? すご〜
藤原樹
藤原樹
……
パッと樹を見ると、フンッてあたしから視線を外した。褒めてんのに!
川村壱馬
川村壱馬
心配すんな。照れてるだけだ
壱馬はフッとほんの少しだけ笑って、小声で言った。あたしは笑って頷く。
川村壱馬
川村壱馬
教科書は俺の使えよ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
え、壱馬のなくなるじゃん
川村壱馬
川村壱馬
お前より馬鹿じゃねぇから
湯浅愛羅
湯浅愛羅
は!?
川村壱馬
川村壱馬
…うるせぇ
壱馬は肘をついて手のひらに顎を置いてわざとらしい大きなため息をついた。
吉野北人
吉野北人
壱馬、用意できたって
川村壱馬
川村壱馬
あぁ
北人が携帯を耳にあてながら壱馬に言う。いつの間にか居なくなっていた、リードの人からの通話だろう。
川村壱馬
川村壱馬
行くぞ
湯浅愛羅
湯浅愛羅
は、はい…
トップのみんなも壱馬が立ち上がると立ち上がり、あたしが壱馬に追いついた頃、後ろからついてきた。教室出てすぐ階段がある(すごく便利だと思う)。その階段を一番下まで降りて、校庭の反対方向に進むと中庭があった。落書きだらけだし、ベンチとかも倒れてたりで、やっぱりほかと変わらない荒れようだった。中庭をつっきって校舎の間を抜けるとそこに体育館らしき大きな建物があった。
中が騒がしいし、壱馬が入ったからここが体育館で正解っぽい。
リードの人が2人扉の両側に立っていた。

ガラッ

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