そして、おもむろに壱馬が言う。
空気がフッと変わった気がした。ピリッとして。みんな壱馬に注目した。
これが灰高全校生徒のヘッド……。
それに返事をするトップの空気も目も違っていた。
途端、クラスにいたリード達が一斉に携帯で電話し始めた。
翔平が答えてくれた。朝礼開くって言った壱馬の指示を、リードがリーダーにまわして、リーダーがクラスの人達に言うのね。
初耳ですけど。
あたしの表情でなんで気持ち読んじゃうかなあ!この人は!
壱馬は呆れたようにため息ついて、ポケットから取り出した煙草をくわえた。高校生なのに、学校なのに、さも当たり前のように吸いだす壱馬に思わず聞いてしまった。
そこは当たり前らしい。。だって、壱馬の力で勝手に転入させたり、朝礼開いたり。バイクで一斉に登校したり、教室で普通にタバコを吸ったり。どれが当たり前でどれが当たり前じゃないのか、もうこんがらがっちゃうよ。。
壱馬は、ん!と教室の後ろを顎で指す。そこはどデカい灰色の布が壁にはられてて、そこに赤い字で書かれている。
灰高 鉄の掟
一,卑怯な手は使うな
一,リンチはしない
一,仲間は守れ
一,一般人は巻き込むな(女子供特に)
一,授業はできるかぎり受ける
一,先生に暴力は禁止
これを考えたのは壱馬なんだと思う。少ししか壱馬のこと知らないけど、壱馬が考えたんだって何となくわかった。
パッと樹を見ると、フンッてあたしから視線を外した。褒めてんのに!
壱馬はフッとほんの少しだけ笑って、小声で言った。あたしは笑って頷く。
壱馬は肘をついて手のひらに顎を置いてわざとらしい大きなため息をついた。
北人が携帯を耳にあてながら壱馬に言う。いつの間にか居なくなっていた、リードの人からの通話だろう。
トップのみんなも壱馬が立ち上がると立ち上がり、あたしが壱馬に追いついた頃、後ろからついてきた。教室出てすぐ階段がある(すごく便利だと思う)。その階段を一番下まで降りて、校庭の反対方向に進むと中庭があった。落書きだらけだし、ベンチとかも倒れてたりで、やっぱりほかと変わらない荒れようだった。中庭をつっきって校舎の間を抜けるとそこに体育館らしき大きな建物があった。
中が騒がしいし、壱馬が入ったからここが体育館で正解っぽい。
リードの人が2人扉の両側に立っていた。
ガラッ
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。