真一郎くんの誕生日当日
私は、真一郎くんが好きだったコーラを買ってマイキーを待っていた
「…あの日もこれくらいの暑さだったね」
2003年の夏、真一郎くんが亡くなった
頭を鈍器で殴打され出血死
「あなたの下の名前」
「あ、マイキー」
マイキーはとてもラフな格好だった
バイクではなく、徒歩で家まで来た
「歩いてきたの?」
「暑くなかった?」
「全然平気」
「じゃ、行こうぜ」
「うん」
マイキーと私の家は近いとも言えないし、遠いとも言えない
何度か家に行ったことはあるから道はだいたい知ってる
「おじいちゃんは元気にしてる?」
「うん元気」
「エマちゃんは?」
「エマも元気」
「あいつはケンチンのことばっかりだからな」
そう、エマちゃんは龍宮寺堅ことケンチンが大好き
恋占いまでするほど
「みんな元気そうだね」
「そっちはどうなんだ?」
「うち?」
「うん」
「みんな元気だよ」
「マイキーは友達と仲良くやってる?」
一瞬顔が曇った
友達と上手くやってるかな
「…やってるよ」
「そっか、良かった」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!