キーンコーンカーンコーン…
授業終わりのチャイムが鳴り響き、休み時間が始まった。そんな中、ポツンと椅子に座り窓の外を眺める少女が一人居た。
私は東風谷早苗。今年4月にこの高校に進学した1年生。
私が一人でいる理由は小学校から同じだった千花という子が同じ高校に進学したからだ。
千花は私のことを神社生まれの不気味な奴と周りに言いふらし、私の目の前で陰口や嫌味、時には自分からぶつかったりなどいじめを昔から続けている子だった。
そのおかげで友達なんていなかった。できなかった。
家に帰っても私は辛かった。
早月は3つ下のわがままな妹だった。
ここまでわがままに育ったのはお父さんのせい。13年前にお母さんが交通事故で他界した後、お父さんは私よりも早月の方が可愛いからという理由でずっと彼女を溺愛していた、辛かった。
そんな私の唯一の心の支えはおばあちゃんだった。おばあちゃんは私を励ましてくれるし、東風谷家に代々伝わる秘術を丁寧に教えてくれた。
しかし、お父さんは最近、こんなことも言い出したのだ。「お義母さんが早月に丁寧に秘術を教えないから早月がこんなにも未熟になったんだ。だから、なんでもできる早苗よりもか弱い早月にはもっと優しくするべきだ。」と。意味がわからない。早月は秘術を真面目に教わろうとなんかしてなかった。
早月は私の筆箱を頭に投げた。
こんなことが毎日続くから私は耐えられなかった。おばあちゃんは数日前に介護施設に行っている。もう家に私の味方はいない。最近は神社で寝泊まりをしている。
神社の前でそうポツリとつぶやいた時だった。
目の前には2人の女性が立っていた。
驚いた。この方達は、昔おばあちゃんからうちの神社の祭神の名前だった。
私は諏訪子様から詳しい話を聞いた。その幻想郷に行くと私達は外の世界では忘れられた存在になること。私は現人神として、風祝として二柱に仕えること。
私は決心した。
翌日、私は介護施設へと向かった。
私は目に浮かべた涙を擦り、おばあちゃんに言った。
光に包まれた後目が覚めた先は美しい山々、綺麗な小鳥達の囀り、美味しい空気に囲まれた素晴らしい場所だった。
その後は風神録異変が起こり、幻想郷の様々な人物と関わる早苗はだんだんとこの幻想郷に馴染んでいった。
彼女を知るものはもう外の世界には居ない。でも、それでいいんだ。お父さんも早月も千花も覚えていない。私に関わった記憶はない。私はここで第二の人生を送る。おばあちゃんと別れるのは辛かったけど、おばあちゃんは私を忘れているだろう。わがままな私でごめんなさい、そして……今まで本当にありがとう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。
登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。