第93話

月島くんの真実
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2021/03/30 23:16

あなた「ふぉー、気持ちよかったー」


お風呂上がり、髪の毛をお団子にまとめながら廊下を歩く。


くー、やっぱり1人でいると歌いたくなっちゃう。


でも、今まで歌って良かった試しがない。


すぐ誰かに見つかるし!!



あなた「わっ」


山口「ひぇあっ!?」


男子トイレからいきなり山口くんが出てきて、思わず後ろに飛び退く。


ってか喜び方可愛いね。愛すわ()。



あなた「ごめんなさい…」


山口「こちらこそごめんね。怪我ない?」


うちがコクリと頷くと、彼はふわりと表情を緩め、男子部屋とは違う方向に向かおうとした。



あなた「っ、山口くん!」


山口「…ん?何?」



あなた「月島くんについて…教えてほしい」


うちの突然のお願いに、彼は目を丸くした。


そして、くるりと踵を返し、こちらに向かって歩いてくる。



山口「人にペラペラ話すようなことではないけど…あなたちゃんなら、良いかな」



月島くんの過去について、教えてもらった。


いじめを受けていた山口くんを助けたこと。


お兄さんが大好きだったこと。


お兄さんがバレーをしていたこと。


お兄さんのカッコいい試合を見てバレーを始めたこと。



レギュラーであると、嘘をつかれたこと。


……試合に出ていないお兄さんを見て、失望したこと。




今、全てのピースがはまった。


お兄さんが本気でバレーをしていることを知っていたから、その分、試合に出ていないお兄さんを見て、辛くなったんだ。



彼があんなに『本気』を拒絶していた理由が分かった。



あなた「……ありがと」


山口「ううん。あなたちゃんが聞いてくれて、嬉しかった」



ふふ、と意味深に笑う顔が、いつもより大人びて見えて、少しだけ心拍数が上がった。



山口「あと、これ…可愛い…って、何言ってんだろ俺。じゃ、じゃーね!」


自分の頭の上を指した後、、すぐに我に返って廊下を走り出した。



これ…って、お団子のこと?



あなた「嬉し…」



横から出てきている触覚を、くるりと指に巻きつけた。





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