第62話

試合後の食事
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2021/02/27 22:53

ミーティングも終わり、うちらは体育館を出た。



烏養「よーし、じゃあ飯行くぞー。もちろん奢りだ」


澤村「…飯っすか?いや…」


烏養「いーから食うんだよ」



いきなり奢りと言い出したコーチ。


何を企んでいるのやら…







ー居酒屋にてー


そこには、大量のご馳走が用意されていた。


どうやら、烏養コーチがあらかじめ予約してくれていたようだ。


他には店員の方以外誰も居なくて、ほぼ貸切状態だ。



目の前にご飯があるというのに、なかなか皆箸を持たない。


それはうちも同じで…何故か、手が動かなかった。



烏養「…走ったりとか跳んだりとか。筋肉に負荷がかかれば、筋繊維が切れる。試合後の今なんか筋繊維ブッチブチだ。それを飯食って修復する。そうやって筋肉がつく。そうやって、強くなる」



コーチは座布団の上にどしっと座る。


烏養「だから食え。ちゃんとした飯をな」



皆、各々手を合わせる。


澤村「…いただきます」


キャプテンのその言葉に、皆も「いただきます」と箸を持った。



あなた「潔子さん……」


隣に座る潔子さんに視線を向ける。


彼女は無表情のまま、コクリと頷いた。


うちはそれを合図に、手を合わせる。



あなた「…いただきます」



ぱくっ。




美味しい。



いつもバクバクと凄い速さで食べる日向くんは、今日はゆっくりと食べていた。


食べ物はどんどんなくなっていく。


いつの間にか、彼らの瞳には涙が浮かんでいた。



もらい泣きしそうになったうちは箸を止め、下を向く。



はぁ…悔しいなぁ……。




清水「あなたちゃん」


あなた「……はい」


清水「…泣かないの?」



あなた「…はい。泣か、ない…っ」


だめだ。今声を出したら泣いてしまう。




清水「……そっか。じゃあ、私も泣かない」


あなた「…?」



何かを堪えながら微笑む潔子さん。



彼女の強さを、改めて知った気がする。






もう皆は、何も、喋らなかった。

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