月島くんに連れてこられたのは、しんとした廊下だった。
使われていない部屋のドアと大量に積まれた段ボールが、狭い廊下をさらに狭くしている。
月島「………ばっかじゃないの」
あなた「えっ、」
突然の悪口……!!
彼の左手はうちの腕を掴んで、離さなかった。
ただでさえ背が高いから威圧感すごいのに、切れ長の瞳のせいでさらにそれが増している。
あなた「な、なんかすみませ_________」
月島「うるさい」
後ずさりしたら背中が壁にぶつかり、完全に逃げられなくなった。
あ……これ詰んだやつだ☆
月島「何で男の人に立ち向かおうとしたの、自分が非力なの分かってるでしょ」
あなた「い、いやぁ、でも、あんなに細い潔子さんと比べればうちの方が強そうだし、嫌な目に合わ
せたくなかったから________」
途端に、彼はうちの腕をぎゅっと強く握ってきた。
ナンパされた時の男の人への恐怖がよみがえり、抵抗してしまう。
月島「ほら、振り解いてみなよ」
あなた「うぐっ……」
びくともしなかった。
いくら細くても、月島くんは男の子で。
月島くんだって力は強かった。
諦めて、身体に入っていた力を緩める。
月島「ほら、できないでしょ。ホント、危機感とか持ってよ危なっかしい」
あなた「すみません……」
ふわりと緩まった彼の手の力と、暖かいぬくもり。
その安心感に、一粒だけ涙が溢れた。
あなた「……怖かったです…」
月島「…そ」
あなた「今だけでいいから、甘えてもいいですか………?」
そう聞くと、彼は少し驚いたような顔をした。
そしてすぐに、肯定するようにうちの頭を撫でてくれる。
それを合図に、うちは彼の胸に飛び込んだ。
かけたままの眼鏡が心配だったけど、今はいいや。
彼のシャツをキュッと掴んで、おでこを彼にくっつけた。
月島くんは、弱いうちをそっと包み込んで、ぎこちなく背中をなでてくれる。
ずっと冷たいと思っていた彼が、こんなに温かい人だと知った。
そう考えると、急に胸が温かくなって_________
少しだけ、頬が熱くなった。
何だろうね、これ。
変な感情____________________。
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読んでくださりありがとうございました😊
いやツッキーに抱きしめられる世界どこ
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!