第151話

烏野の主将
2,392
2021/06/15 22:00

あなた「っ__________!」




試合中、田中先輩とと澤村先輩が、ぶつかった。


皆は慌ててコートに駆け寄り、彼の様子を見る。


うちも階段を降りて、彼の方へ向かった。



彼はぺっと血を吐き出して。


歯が、折れていた。



田中「大地さんっ、」



田中先輩は、泣きそうな顔をして澤村先輩を見ている。


澤村「気にすんな、田中」


田中「でも、」


澤村「俺は大丈夫だ。試合、続けろ」


田中「……はい」


あなた「あ、うちついて行きます」


澤村「ありがとう」



澤村先輩の肩を抱え、うちは養護室へ向かった。












「あらー、歯が折れちゃったのね。そうねぇ……」


養護担当の先生は、淡々とした口調で治療を進めていく。



大体の治療を終えたところで、先生はこちらに先輩を受け渡してきた。


「座ってて。しばらく安静にしてないと、脳震盪とか怖いでしょ?」


あなた「脳震盪…」


聞いたことはあるがどんな症状か分からない故に、変に恐怖をおぼえる。


「私ちょっと行ってくるから。君はこの子を見てあげて」


あなた「あっ、はい」


「うん」


先生が出て行った後、澤村先輩はベッドに腰掛けたまま、フッと笑った。



澤村「『この子を見てあげて』って、俺は子供っぽいやつに子守されなきゃならないのかぁ?」


あなた「えぇっ、子供っぽいですか……って、喋らない方がいいですよ、」


澤村「いや、だいじょ________」


きゅっと顔を顰めた先輩。絶対痛いじゃん。


あなた「良いです。痛いでしょう?」


澤村「……」


澤村先輩は何か言いたそうだったが、ぎゅっと口をつぐんだ。



あなた「代わりにうちが喋りますね。えーと、澤村先輩の良いところはですね、」



面倒見がいいところ。


人一倍努力しているところ。


皆の大黒柱で、まとめるのが上手なところ。


たまーに、ちょっと腹黒なところ。



あなた「偉そうな言い方かもしれませんが………烏野の主将が、澤村先輩で良かったです」


言いたいことは言い切ったぞふふん、とドヤ顔をして見せる。


澤村先輩はうちと目を合わせず、少しだけ照れていた。


そりゃ真正面から褒められたら照れちゃうよね。



あなた「……嬉しいですか?」


澤村「……あー、まぁ。少し恥ずかしいけどな」



あなた「勝てるといいですね」


澤村「……いや、勝とう」


あなた「はい」





澤村先輩は、どこまで行っても主将だ。

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