あなた「っ__________!」
試合中、田中先輩とと澤村先輩が、ぶつかった。
皆は慌ててコートに駆け寄り、彼の様子を見る。
うちも階段を降りて、彼の方へ向かった。
彼はぺっと血を吐き出して。
歯が、折れていた。
田中「大地さんっ、」
田中先輩は、泣きそうな顔をして澤村先輩を見ている。
澤村「気にすんな、田中」
田中「でも、」
澤村「俺は大丈夫だ。試合、続けろ」
田中「……はい」
あなた「あ、うちついて行きます」
澤村「ありがとう」
澤村先輩の肩を抱え、うちは養護室へ向かった。
「あらー、歯が折れちゃったのね。そうねぇ……」
養護担当の先生は、淡々とした口調で治療を進めていく。
大体の治療を終えたところで、先生はこちらに先輩を受け渡してきた。
「座ってて。しばらく安静にしてないと、脳震盪とか怖いでしょ?」
あなた「脳震盪…」
聞いたことはあるがどんな症状か分からない故に、変に恐怖をおぼえる。
「私ちょっと行ってくるから。君はこの子を見てあげて」
あなた「あっ、はい」
「うん」
先生が出て行った後、澤村先輩はベッドに腰掛けたまま、フッと笑った。
澤村「『この子を見てあげて』って、俺は子供っぽいやつに子守されなきゃならないのかぁ?」
あなた「えぇっ、子供っぽいですか……って、喋らない方がいいですよ、」
澤村「いや、だいじょ________」
きゅっと顔を顰めた先輩。絶対痛いじゃん。
あなた「良いです。痛いでしょう?」
澤村「……」
澤村先輩は何か言いたそうだったが、ぎゅっと口をつぐんだ。
あなた「代わりにうちが喋りますね。えーと、澤村先輩の良いところはですね、」
面倒見がいいところ。
人一倍努力しているところ。
皆の大黒柱で、まとめるのが上手なところ。
たまーに、ちょっと腹黒なところ。
あなた「偉そうな言い方かもしれませんが………烏野の主将が、澤村先輩で良かったです」
言いたいことは言い切ったぞふふん、とドヤ顔をして見せる。
澤村先輩はうちと目を合わせず、少しだけ照れていた。
そりゃ真正面から褒められたら照れちゃうよね。
あなた「……嬉しいですか?」
澤村「……あー、まぁ。少し恥ずかしいけどな」
あなた「勝てるといいですね」
澤村「……いや、勝とう」
あなた「はい」
澤村先輩は、どこまで行っても主将だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。