烏野高校では、HR前、10分間の読書タイムがある。
うちは読書が好きだから、この時間が大好きだ。
今日は、お母さん達が買ってくれた、『1%の恋人』を持ってきた。
いくらうちが、恋愛に興味なさそうだからってここに手間かける…?
ちょっと変わった両親に感謝しつつ、本を開く。
物語の主人公はモデルで、あるMVを撮影することになった。
そこで出会った女性に一目惚れ、2人は一気に仲良くなる…。
年下である主人公をからかう、年上の女の子__________。
そんな感じの物語のようだ。
ーー
主人公『〇〇さんといると、やっぱ楽しいですね』
女の子『ほんとぉ?ありがとー!私も楽しいよ』
あぁ、ほらまた、思わせぶり__________。
でも、そんな思わせぶりな言葉でも、単純な僕は舞い上がって。
また、好きになっていく。
ーー
うぅ…きゅんきゅんする…!
恋愛に面識のないうちは、思わず頬が緩んでしまう。
顔が見られないよう、本を閉じてそれを額にコツンと当てた。
恋って、憧れるなぁ…。
何気なく横を見ると、月島くんと目が合った。
最近席替えをし、なんと彼が左隣になってしまった。
ちなみに席は1番廊下側の、3列目である。
彼が読んでいる本は、難しそうな推理小説のようだ。
うちは小さなリングノートに『どんな本ですか?』とかいて、彼の机にポンと置いた。
先生にバレないように、またうちは本を開いて読んでるふりをする。
しばらくすると、答えが返ってきた。
『シャーロックホームズ』
少し小さめの綺麗な文字。
意外と可愛らしい字体で、不覚にも笑ってしまう。
『難しそうですね。推理小説好きなんですか?』
『嫌いじゃない。そっちは何の本?』
『恋愛小説です。お母さん達が買ってきてくれて…めっちゃきゅんきゅんです。』
『ふーん、だからニヤついてたんだ』
なっ…!!
思わず彼の顔を見ると、彼はこちらを見てニヤリと笑っている。
バレてた…!!!
『誰にも言わないでくださいよ?』
ノートを渡すと、彼も返事を書いてくれる。
『言わないよ。』
そう書いてこちらに見せてから、彼はまた何かを書いている。
『可愛かった。』
あなた「んなっ…!!//」
シーンとした中で声を出してしまい、うちの声が教室に響く。
みんなに爆笑された。
月島くんも、自分は関係ないとでもいうようにクスリと笑っている。
あなた「もー…!」
むかついて、彼の頭をわしゃわしゃしてやった。
月島くんとの交換ノートが楽しかったのは、内緒ね。
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読んでくださりありがとうございました😊
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!