第64話

3日後。
4,029
2021/03/01 22:03

あの試合から3日が経った。


今は数学の授業中だ。


数学は好きだし得意なのに、全然頭に入ってこない。


いつもより、何かが足りない。つまらない。


隣に座る月島くんも、つまらなそうに窓の外を眺めている。


前の方の席の山口くんも、ずっと下を向いたまま動かなかった。


うちがこうなっているのも、2人が授業に集中できていないのも、理由は知っている。



ふと、あの時の試合が思い浮かぶ。



完璧にハマったトス。


綺麗な姿勢のスパイク。



そして___________ボールが落ちる音。



あまりにも鮮明に覚えている。


月島くんと山口くんが、こんなにも違う。



だから、あの2人は、尚更____________


















うちは、ボールの空気でも入れようと思い体育館に向かっていた。



体育館の重いドアの前に立つ。



中からは……ボールの音。


まさか。


小さな期待を抱いて、ドアを少しだけ開けた。



あなた「!?」


日向「うわああああああああ!!!」




最初に目に飛び込んできたのは、日向くんが体育館中を走り回る姿。



影山「……クッソがぁ!!」



影山くんも、ある限りのボールをどんどん打ち出した。


力の限り、思う存分。





……………大丈夫、なのかな。





2人は疲れきって、地面に伸びた。


影山くんなんか、ほぼでんぐり返しの体勢みたいになっている。





日向「……勝ちてぇ」


日向くんの声は震えている。


それは今にも泣き出しそうで、うちは拳をぎゅっと握った。


影山「…俺は、謝んねぇ。謝んなきゃいけねーようなトスを、上げねぇ!」


ハッとして彼をみる。


あの時、手洗い場で言ったこと。







『悪かったな。最後まで、完全に読まれた』



『謝ってんじゃねぇ!!』






あなた「…っ」



及川さんは、強かった。


強いサーブと、強いトスで、うちらを圧倒した。




でも。




諦めの悪さなら、負けない。


絶対いつか超える。


超えたい。


この人達と。




清水「……あら、あなたちゃん」


あなた「潔子さん…!」


制服姿の潔子さん、可愛い…じゃなくて。


今明らかにそんな雰囲気じゃなかったやん。



あなた「影山くんと、日向くんが…」


清水「…あら」



潔子さんは堂々と中に入ると、対峙している2人に声をかけた。



清水「お昼はちゃんと食べなさい」


日向「おぁっ、清水先輩!」


清水「…あと、あまり奇声を発しないように。部室まで聞こえた」


日向「はいっ」


部室まで聞こえたんか…。


??「「潔子さあああああん!!」」



あ…誰がきたか察した。


うちらがいる出入り口の反対側の出入り口には…ほらね。


田中先輩とゆうくんと…2年ズ。


田中「潔子さん!今日も美しいっす!」


ノヤ「あなたに会いにきました!!」


田中&ノヤ「「あなたに一生ついていきまああああああす!!!」」


潔子さんに向かって飛んでくる彼ら。


しかし潔子さんは、しゃがみ込んでそれをかわした。


そして、2人はそのままうちのところに……。




あなた「わあああああああ!!!」



ずってーーーん!



いだだだ…。



受け身も取れず、地面にダイブしてしまった。



なんか重いし………。



縁下「西谷ぁ…お前なぁ」



…あ、ゆうくんが上に乗ってんのか。



あなた「そういうことね」


田中「驚けよ!もしくは恥ずかしがれよ!」



華麗にツッコミを入れられた。


??「しゃーっす!」


??「…ちっす」



そして、さらに現れたのは、山口くん。


その後ろからは月島くんも。



ノヤ「あとは…3年か」


縁下「でも、今日は元々部活ないし。…ってか何事もなかったかのように立ち上がるのやめろ」


田中「おいおいおい!3年が引退なんかするわけねーだろ!」


引退…?


日向「!どういうことですか。3年生は、残りますよね!?春高に行くって言ったの、変わらないですよね!」


日向くんは、自分の方に歩いてくる潔子さんに問いかける。


でも、まさか…本当に?


本当に、もう、引退しちゃうの?


潔子さんは黙ったままだ。



するとどこからか、足音が聞こえてきて…。







??「はぁ〜やばいやばい。早く!」



体育館に入ってきたのは、澤村先輩と菅原先輩と、旭さん。


彼らの姿を見た瞬間、日向くんはパァッと表情を輝かせた。


清水「……うん」


日向「?」




清水「変わらない」



〜っ!!




あなた「良かった〜…!」




近くにいた潔子さんにぎゅっと抱きつき、頬をすりすりする。



清水「どうしたの(笑)」


あなた「安心しちゃって…」



田中「遅いっすよ!」


田中先輩は、嬉しそうにそう言った。


菅原先輩ははぁはぁと息をしながら、パッと顔を上げる。





菅原「行くぞ!春高!!」




全員「「よっしゃあああああああ!!!」」





練習が始まった。


スパイクの練習、トスの練習。


皆目つきが変わっているのが分かる。



あなた「日向くん!」


日向「ん?何〜?」


あなた「レシーブは、もう少し手首をこう…下げて…」


うちは、今までの試合で習ったことを教えた。


日向くんの後ろに回り、後ろから彼の手を扱う。


日向「えーっと…こうか?」


あなた「うん!そうするとボールも安定するらしいです」


田中「あなた距離感バグってんな」



田中先輩に指摘されて気づいた。


うちは日向くんから慌てて離れ、弁解しようとする。



あなた「これはっ、悪気は、無…」



その時、ドアが開いた音がした。


そこにいたのは_______




烏養コーチだ。



全員「「おはざーっす!!」」


烏養「お前ら…元気じゃねーか」


皆は、ボールを投げ出してコーチに駆け寄る。


澤村「改めて、ご指導よろしくお願いします!!」


「「お願いしまぁっす!!」」








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読んでくださりありがとうございました!

変なとこで切っちゃってすみません💦

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