第120話

歯形
3,018
2021/04/25 22:00

あなた「ただいまーっ」




母「おかえり。英くんが、『あなたが帰ってきたら俺の家に呼んでください』ってお願いに来てたわよ」


あなた「え、ほんと?今から行ってきていい?」


母「いいわよ。いってらっしゃい」





うちのお母さんは、英くんを信頼しているようだ。


たしかに、問題も起こしたことないし、礼儀も正しいしね。


うちは荷物を部屋に置き、バレー部のジャージのまま隣の家へ向かった。










ピンポーン。




インターホンを押すと、まもなく中からドタドタと足音が聞こえてきた。


突然にドアが開いて、裸足のえいくんが飛び出してくる。



あなた「びっくりしたぁ……!!」


国見「行くなって言ったろ、バカ!」


あなた「ひぃえっ!!」




英くんが怒鳴るなんて珍しい。





国見「…とりあえず、中入って」


あなた「う、うん。お邪魔しまーす」






英くんの家は、やっぱり落ち着く。


広いところはあまり落ち着かないのに、何でだろう。




国見「俺の部屋、行ってて」


あなた「うん」




言われた通り2階に上がり、相変わらず綺麗に整理されている彼の部屋に入った。


そして、いつものようにベッドに転がる。






あなた「んーっ……」


合宿で疲れたから、眠いなぁ…。



国見「……またベッドに居る」


あなた「気持ちいいんよ。英くんの匂いって、やっぱ落ち着く」


国見「…そういうこと言うなって」




文句を言う英くんは、うちのためにいちごミルクを持ってきてくれたみたいだ。


いちごミルクって、甘くて美味しいんだよなぁ…。


ちなみに、塩キャラメルが好きな彼はアイスキャラメルラテである。ここはカフェか。





国見「何で行ったの?合宿」


あなた「えぇ…?行きたかったから…かな?英くんが心配してるようなこともなかったよ。優しい人ばっかりだったし」



合宿も襲撃されなかったし、ごはんに毒も入ってなかったし。


国見「……変なこと考えてんな」


あなた「え、変かな?」


普通に心配するべきことだよ!!命に関わる!!



国見「男ばっかりのとこに行かないで。あと男に近づかないで」


あなた「えぇ…?」




英くんにそんなこと制限されなくちゃいけないの?


男子バレー部のマネージャーやめろってことだよね?嫌だよ?せめて春高予選まではっ…!!



すると彼はベッドに寝ているうちを引き寄せ、ぎゅっと抱きしめた。




あなた「え、あ、英くん……!?」







国見「………心配した」




あなた「え……?」




心配……シンパイ?






……そっか。心配してくれてただけなんだね。





あなた「……ありがとう。でも大丈夫だよ。もう高校生だし、気をつけるべきことなんてちゃんと分かってるし、」




国見「…あなたは、何も分かってない」


あなた「わっ……!」



英くんはうちの両手首を掴み、さらにグッと自分の方に引き寄せた。


急な衝動に追いつけず、心臓がバクバクだ。





顔が近い。


掴む力が強い。


そうだ、英くんは男の子なんだ(可愛すぎて気づいてなかった☆)。


こんな状況から、うちが逃げられるはずがない。





国見「あなたは相手が俺でも抵抗できない。同学年で、力も強くない俺でもだ。2年3年とか、もっと力の強い人とかが集まるところになんて行かせたくない。あなたが危ない」




………ふふ、英くんは心配性だなぁ。


いつも無気力な顔でボーッとしてる英くんが、こんなに焦っているなんて。


ここまで心配してくれる英くんに、思わずくすりと笑ってしまう。






あなた「…大丈夫、だよ。きっと、誰かが守ってくれる」


国見「……ん」


英くんはまだ腑に落ちないと言う顔をしていたが、一応落ち着いたみたいだ。






国見「…じゃあ、今回の件は許す」


あなた「うん……」





ホッとした瞬間、彼はうちの手に顔を近づけて____________














カプリ、と噛み付いた。







あなた「いっ………だ!!歯形ついちゃってる!!ええぇぇえ!?何で!?」




守るって言ったそばから傷つけます!?普通!!!






国見「_____________俺のものだっていう、印」




あなた「……?///」



国見「照れてる。かーわい」



あなた「なっ、て、照れてないし!バカ!」




国見「…クッキー食べる?」



あなた「……たべる」





どうしてもお菓子やスイーツには負けてしまうわけで。


うちは、英くんが持ってきたチョコクッキーに早速かぶりついていた。







国見side



目の前で幸せそうにクッキーを頬張る彼女を眺める。


やっぱり拗ねていても、こいつは甘いものや可愛いものには弱いのだ。





すごく……可愛い。




可愛すぎる。ずるい。こんなに可愛いあなたを、男だらけの合宿に行かせたくない。



でも、学校が違うから束縛とかはできないわけで。



せめてもの、『俺のものだ』っていう印をつけた。


はぁ……俺、意外と束縛強かったんだな。



あなた「英くんも食べる?はい」



気を遣って、クッキーをぎこちなくこちらに差し出すあなたが可愛い。



でも。



国見「……食べる」





あなたがこの気持ちに気づくまでは、言わないでおこうかな_____________。












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