第133話

影山くんの目指す場所
2,707
2021/05/13 22:00

烏養「よーし、こっから自主練ー!」



烏養コーチから号令がかかり、皆は各々練習を始めた。


そしてうちと仁花ちゃんは、洗ったゼッケンを干すために体育館の入り口に向かう。



そして気づく。



体育館の入り口付近で、怪しい人影がうろついていることに……





あなた「あの…影山くん、何してるんですか?」


影山「ギクッ」



ピクリと反応して振り返ったのは、黒のフードとキャップ、サングラスをかけた影山くんだった。


影山「俺って分かるのか!?」


谷地「そりゃあ……もしかして、変装のつもりだった?」



仁花ちゃんがそう声をかけると、影山くんからはただならぬ空気が。


彼は、代表決定戦で当たるかもしれない相手で、どうしても見ておきたいチームがあったのだそう。


彼はわざわざ暑い中長袖を着て、その相手なる高校をこっそり見学しにいっていたと言うわけだ。



あなた「ち、ちなみに、その学校は何て言う……?」




影山「……ついてくるか?今から」


あなた「え?」










あなた「こ、ここ、ですか?」


影山「あぁ。体育館はこっち」



そう言って、うちの手を引いて歩いて行く影山くん。


あの、ここ、もう知ってる場所なんだけど……




青城じゃねーか!!!




心の中で突っ込みつつ、体育館の小窓から彼らを覗く。


そこにはちょうど、青城の男子バレー部が。もちろん中には英くんもいる。



国見「……!」


金田一「どうした?」


国見「……あなたの気配がした」


金田一「はぁ?」



あなた「ギクゥゥゥゥッ‼︎!」



何よその『兎和あなたレーダー』は!!



及川「えぇ、ほんとー?見られてるんなら頑張らなきゃだね!ってことで、国見ちゃんも練習しよっか!」


国見「うわ……」



あからさまに嫌な顔をしつつ、反抗はできないようで。




うちらはしばらく青城のプレーを観戦し、烏野の学校に戻ったのは7時くらいだった。








日向「おー!影山ーあなたーおかえりー!青城どうだった!?」



烏野の体育館に戻るなり、日向くんがボールを持ったまま駆け寄ってきてくれた。


そして、影山くんはさっきまで生き生きとしていた顔を少し曇らせて。





影山「俺は___________一生及川さんに勝てないかもしれない」



あなた「!?」



日向「何言ってんだ!ふざけんな!何見たんだ!!」



影山くんがこんなこと言うなんておかしいと思った。


でも、青城の練習を見て、びっくりしたのは本当だ。


だって。




影山「青城は、多分OBのいる大学と練習試合やってた」



休憩中にメンバーを変える時、及川さんは大学チームのセッターとして入った。


初めて会った人たちで、しかも目上の人ばかりのチームなのに。




でも、____________及川さんは、その中でやってのけたのだ。



大学生の方が言っていた言葉。



『アイツはすごい。どんな奴からも100%を引き出すトスをする』。



影山くん曰く、彼はどんなに相性の悪い人でも、自在に使いこなすのだという。



うちら烏野の影山くんだって負けてない。



でも、そんな話聞いちゃあ、自信もなくなっちゃうよ……。





日向「…そのスゲェ大王様に、改めてビビっちゃったのかよ影山くんは」



影山「あぁ………スゲェビビった」



そう言った影山くんの表情と言ったら。



どこまでも生き生きとしていて、微かに笑みすら浮かべていた。




影山「その及川さんの3年間、全部詰め込んでんのが今の青城で、春高は唯一それと戦えるチャンスだ。進歩して、絶対勝つ!」



影山くんは諦めていなかった。



むしろ、その立ちはだかる壁にワクワクしているようだ。


そんな影山くんを見て、日向くんも一層やる気が出たようで。



日向「うおおおおおお打倒大王様ああああああ!!!!」



影山「俺のセリフだバカ野郎!!!」



いつもの影山くんだ……。




澤村「……絶対勝つぞー!」



全員「「おおおおおー!!!」」











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