烏養「よーし、こっから自主練ー!」
烏養コーチから号令がかかり、皆は各々練習を始めた。
そしてうちと仁花ちゃんは、洗ったゼッケンを干すために体育館の入り口に向かう。
そして気づく。
体育館の入り口付近で、怪しい人影がうろついていることに……
あなた「あの…影山くん、何してるんですか?」
影山「ギクッ」
ピクリと反応して振り返ったのは、黒のフードとキャップ、サングラスをかけた影山くんだった。
影山「俺って分かるのか!?」
谷地「そりゃあ……もしかして、変装のつもりだった?」
仁花ちゃんがそう声をかけると、影山くんからはただならぬ空気が。
彼は、代表決定戦で当たるかもしれない相手で、どうしても見ておきたいチームがあったのだそう。
彼はわざわざ暑い中長袖を着て、その相手なる高校をこっそり見学しにいっていたと言うわけだ。
あなた「ち、ちなみに、その学校は何て言う……?」
影山「……ついてくるか?今から」
あなた「え?」
あなた「こ、ここ、ですか?」
影山「あぁ。体育館はこっち」
そう言って、うちの手を引いて歩いて行く影山くん。
あの、ここ、もう知ってる場所なんだけど……
青城じゃねーか!!!
心の中で突っ込みつつ、体育館の小窓から彼らを覗く。
そこにはちょうど、青城の男子バレー部が。もちろん中には英くんもいる。
国見「……!」
金田一「どうした?」
国見「……あなたの気配がした」
金田一「はぁ?」
あなた「ギクゥゥゥゥッ‼︎!」
何よその『兎和あなたレーダー』は!!
及川「えぇ、ほんとー?見られてるんなら頑張らなきゃだね!ってことで、国見ちゃんも練習しよっか!」
国見「うわ……」
あからさまに嫌な顔をしつつ、反抗はできないようで。
うちらはしばらく青城のプレーを観戦し、烏野の学校に戻ったのは7時くらいだった。
日向「おー!影山ーあなたーおかえりー!青城どうだった!?」
烏野の体育館に戻るなり、日向くんがボールを持ったまま駆け寄ってきてくれた。
そして、影山くんはさっきまで生き生きとしていた顔を少し曇らせて。
影山「俺は___________一生及川さんに勝てないかもしれない」
あなた「!?」
日向「何言ってんだ!ふざけんな!何見たんだ!!」
影山くんがこんなこと言うなんておかしいと思った。
でも、青城の練習を見て、びっくりしたのは本当だ。
だって。
影山「青城は、多分OBのいる大学と練習試合やってた」
休憩中にメンバーを変える時、及川さんは大学チームのセッターとして入った。
初めて会った人たちで、しかも目上の人ばかりのチームなのに。
でも、____________及川さんは、その中でやってのけたのだ。
大学生の方が言っていた言葉。
『アイツはすごい。どんな奴からも100%を引き出すトスをする』。
影山くん曰く、彼はどんなに相性の悪い人でも、自在に使いこなすのだという。
うちら烏野の影山くんだって負けてない。
でも、そんな話聞いちゃあ、自信もなくなっちゃうよ……。
日向「…そのスゲェ大王様に、改めてビビっちゃったのかよ影山くんは」
影山「あぁ………スゲェビビった」
そう言った影山くんの表情と言ったら。
どこまでも生き生きとしていて、微かに笑みすら浮かべていた。
影山「その及川さんの3年間、全部詰め込んでんのが今の青城で、春高は唯一それと戦えるチャンスだ。進歩して、絶対勝つ!」
影山くんは諦めていなかった。
むしろ、その立ちはだかる壁にワクワクしているようだ。
そんな影山くんを見て、日向くんも一層やる気が出たようで。
日向「うおおおおおお打倒大王様ああああああ!!!!」
影山「俺のセリフだバカ野郎!!!」
いつもの影山くんだ……。
澤村「……絶対勝つぞー!」
全員「「おおおおおー!!!」」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。