月島「…?」
やばっ。
慌てて体育館の影に隠れる。
バレてない、よね……。
??「あーちょっとそこの。烏野の…眼鏡の!」
第三体育館の前まで来た時、月島くんが誰かによびとめられた。
多分黒尾さん…の声かな。
月島くんは訝しげに振り返り、体育館の中にいる人達を見た。
黒尾「ちょっと、ブロック飛んでくんない?」
月島「……あ、僕もう上がるので。失礼しまーす」
主将2人「「なにっ!?」」
梟谷主将「ブロック無しでスパイク練習しても意味無いんだよ〜。頼むよ」
月島「何で僕なんですか?梟谷の人、」
??「…木兎さんのスパイク練、皆早々に逃げるんだ」
中から、さらに梟谷のセッターが現れる。
黒尾「俺はコイツ鍛えるのに忙しいんだよねー」
灰羽「だーから、俺がブロック飛びますってばー!」
黒尾「うるせえっ!」
騒ぎ始めた音駒2人を、月島くんは冷たい目で見ている。
まぁ無理はない。
黒尾さんは梟谷の…木兎さん?を指差し、こういった。
黒尾「こいつ見えねぇかもしんねーけど、5本の指に入るくらいのスパイカーだから、練習になると思うよ」
??「3本の指にはギリギリ入んないですがね」
黒尾「ドンマイ(優しい囁き声)」
木兎「落とすくらいなら上げないでください!!」
黒尾「それに君、ミドルブロッカーなら、もう少しブロックの練習した方がいいんじゃない?」
その言葉に、月島くんはカチンと来たようだ。
彼は黙ったまま、第三体育館の中へ入っていった。
黒尾「…それと、烏野の可愛いお嬢さん。君もおいで」
あなた「バレてたっ!」
月島くんのブロック練習が始まった。
木兎さんのスパイクはさすが5本指とでもいうようなもので、月島くんの高いブロックを悠々と越す。
木兎さんの強すぎるスパイクを、月島くんはなかなか止められない。
あ、まただ。
なかなか止められないことにムカッときたのか今度は守るところを考えたようだが、木兎さんは月島くんの手を弾き飛ばすようにボールをいれた。
木兎「っしゃあ!」
赤葦「一枚ブロックに勝っただけっすよ」
木兎「うっせーな!」
黒尾「じゃ、2枚ブロックならどうだ?」
…練習は良いのですが黒尾さん。
後ろでリエーフくん倒れてますが大丈夫ですか。
本当はブロックのコツを考えたかったが、リエーフくんの介護に回ることにした。
あなた「リエーフくん……これ、ドリンク。うちまだ一回も飲んでないから、どうぞ」
灰羽「ごめん…ありがとう」
黒尾「アイツ何も出来てねーのに女の子に介抱されてんだけど!」
灰羽「頑張ったご褒美ですぅー!」
何を争ってんだか…。
木兎「やっぱ眼鏡君さぁ、読みは良いんだけど、こう……弱々しいんだよな、ブロックが!」
月島「💢」
木兎「腕とかポッキリ折れそうで心配になる」
分かる。背高いくせに細いし。羨ましいんですけど!!
月島「…僕まだ若くて発展途上なんですよ。筋力も身長も、まだまだこれからなんで」
木兎「あぁん!?」
黒尾「流暢なこと言ってると、あのちびちゃんに良いとこ全部持ってかれんじゃねーの?同じポジションだろ」
月島は、日向くんに負けるというのは本当に嫌で、ムカつくことだろう。
そしてそれをわかっている黒尾さんは、本当に煽り上手である。
黙りこくった月島くんに、皆は首を傾げた。
月島「……それは仕方ないんじゃないですかねぇ。日向と僕じゃ、元の才能が違いますからねぇ」
元の『才能』。
その言葉に、ガツンと変な衝撃が来た。
才能、か…。
今まで目を逸らしてきたことと、今、正面で向き合った。
うちに、才能はあるのだろうかという疑問。
人に凄いと言われる、誰にも負けない才能が…。
うちには、ない。
月島くんは恵まれた才能があるのに、それに気づいていないなんてもったいなさすぎる。
体育館がなんとなく暗い雰囲気になった時、音駒と犬岡くんが明るい声を出して入ってきた。
犬岡「あぁっ、またスパイク練習ですか!?俺ブロックやります!」
夜久「おいリエーフ、転がってんじゃねぇ。レシーブ!」
灰羽「げっ夜久さん!」
夜久「げって何だ!」
月島「…じゃあ僕、お役ごめんです。失礼します」
黒尾「あっ、おい!」
赤葦「…なんか地雷踏んだんじゃないすか。黒尾さん」
木兎「怒らしたー。大失敗じゃん。挑発上手の黒尾くん」
黒尾「いや、だって思わないだろ」
木兎「何を?」
黒尾「烏野のちびちゃんは確かに得体も知れないし脅威だけど、技術も経験もひよっこだろ。それにあの身長だし。それをあの、身長も頭脳も持ち合わせている眼鏡くんが、ちびちゃんを対等どころか敵わない存在として見てるなんてさ」
たしかに…。
あなた「…何で本気、出そうとしないのかな…」
黒尾「……で?嬢ちゃんは眼鏡くんを追いかけなくて良いのかい?彼女だろ?」
あなた「かのっ…違いますよ!」
黒尾「ふーん。じゃあ何で追いかけてきたわけ?」
あなた「…全然頑張ろうとしないから…。何か、自分にできることをしたくて」
黒尾「そ。じゃあ近くに居てやんな。マネージャーとして」
あなた「…はい。失礼します。ありがとうございました」
黒尾「…はぁ、あんな可愛いマネが居るなんてねぇ。烏野も富んでんなぁ」
木兎「勧誘しないのか?」
黒尾「してるわ」
赤葦「主将の顔が怖いんじゃないですか」
黒尾「なるほどな…って主将俺じゃねーか!!!」
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。