あなた「はっ、はっ……」
谷地「あなたちゃん、……お疲れ様」
仁花ちゃんが、小さな手でうちの身体をさすってくれる。
澤村「………そろそろだな」
その言葉に、皆が立ち上がる。
あの時、抱いた悔しさを抱いて。
澤村「よしっ、行くぞー!!」
「「「ッシャー!!」」」
澤村「声出してけよー!」
日向「しゃーっ!」
田中「しゃーっす!」
烏野は一段と気合が入っているようだ。
皆は声を張り上げ、アップに入っている。
ふと影山くんに目をやると、彼はボールを落としてしまい、そのボールがコロコロと転がっていくのが見えた。………及川さんのところへ。
及川さんはそれを手に取る。しかし運悪くか、影山くんもボールに手を伸ばした。
そして、……そのままボールの取り合いに!?いやなんで!?
及川「これはこれはぁ!前回俺にコテンパンにやられたトビオちゃんじゃないですカ!」
影山「今回は勝ちにきましたっ…!!」
及川「お前は前回完膚なきまでに凹ましたからなぁ!残すは牛若ヤローただ一人!!」
そこで及川さんはパッとボールを突き放す。影山くんは勢いで転がってしまった。
及川「今回も!退いてもらうぜ飛雄ォ!あーっはっはっは!思い知ったかー!」
あなた「ゥオラーッ!!」
及川「ぐふぇっ!!」
あなた「ふぅ……みなさん、素敵な試合をしましょうね✨」
月島「華麗にドロップキック加えといてその爽やかさ何?」
日向「めっちゃ笑顔だし」
矢巾「なぁおい……烏野に女の子増えてる」
アップ中、近くでそんな声が聞こえた。
その声がする方を見ると、矢巾さんと金田一くんが仁花ちゃんの方を見ながら話している。
矢巾「綺麗系とおっとり系と、さらには可愛い系かぁ……」
パチリ、と目があった。
反射的に、笑顔で会釈をすると、矢巾さんはびくりと肩を震わせ、それから耳を赤くして、目を逸らした。何か悪いことでもしただろうか。
金田一くんはこっちに気づいてないみたいだけど。
金田一「そっすね……この悔しさなんでしょうか」
矢巾「うん……よしっ」
矢巾さんは途端にボールを掲げると、仁花ちゃんの方へそれを投げた。取ってもらうつもりだろう。
案の定、仁花ちゃんはそれに気づいて手を伸ばす。
矢巾「すみませぇん、取ってください……!(無駄なキラキラエフェクト)」
花巻「ヤベッ……危ない!」
レシーブをミスったようだ。
花巻さんが撮り損ねたボールは、仁花ちゃんの方へ一直線。仁花ちゃんはそれに対応できず、思わず目を瞑るのだが……
バシィイィィィッ!!
直前で、潔子さんがそれを薙ぎ払ったのだ。
田中先輩が恨みがましい目つきで矢巾さんにボールを渡していた。
あなた「かっ……カッコいい〜!!うおおおおっ、うちもあんな風に……!」
月島「あぁ、ホントに?じゃあやってみてよ」
あなた「ぐぅえええっ!!」
何も顔面に当てなくたっていいでしょ!!
尻餅をついたまま投げた本人を睨みつけると、月島くんはクスクスとこちらをみて笑っていた。
腹を殴ってやった。
月島「い''っ……!?!?」
縁下「あなたー、そこは女の子らしくポカポカ殴るとこだぞー」
あなた「そんなの罰ではありません!!真っ当な制裁を受けるべきです!!」
澤村「あなたも強くなったなぁ……泣」
菅原「親か」
あなた「パパー」
ノリに乗って、両手を広げて澤村先輩に駆け寄ってふざけてみた。
イメージ的には3歳のつもりである。
菅原「こらっ、男子高校生にそんなことしちゃいけませんっ!誘拐されますよ!」
澤村「誰が犯罪者だスガ!!」
全員でギャハハと笑いまくっていると、後ろからポン、と肩を叩かれた。
二口「今………良いか?」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。