あなた「おはようございます」
夏休みも終盤にかかった頃、うちは男子バレー部の部室へやって来た。
雑巾と、バケツと、ほうきをもって。
何故かって?掃除をするためだよ!!
あなた「ちょっと、ゴミはゴミ箱に捨ててくださいよ!」
と、地面に落ちているお菓子のゴミをポイとゴミ箱に捨てる。
西谷「宿題終わんねー!!」
田中「縁下ァ!助けてくれーっ!!」
そう嘆きながら、ちゃぶ台を持って来て宿題をしている2年生と、監視の縁下先輩。
縁下「ごめんね、あなたちゃん。掃除なんてさせちゃって」
あなた「いえ、このままでは腐海になってしまうと思って」
まぁ、運動部なんて大体こういうもんかな。
そう考えながら、ふと、壁に貼ってあるポスターを見た。
水着の女性らが数人居るそのポスターを見て、あぁコイツらそういえば男だったと思い出す。
しかも、付箋まで貼ってあって、なんとそれぞれの好きな人まで書かれていた。(これアニメで本当に書かれてあります!!)
あなた「どれどれ……」
菅原「あ''っ、あなたそれっ…!」
焦ったような声が聞こえたが、聞こえないふり、と。
菅原先輩→年上好き
木下先輩→ショート命
成田→ロリコン
田中→ヘンタイ
縁下→ツンデレ と書かれている。
大地さんは……うん、やっぱり触れない方がいいな。触れてはいけないこと書いてるから。
そして、ここに旭さんのタイプが書かれていないことに謎の安心感を覚えた。
あなた「はぁ……」
西谷「どうしたんだー?」
あなた「いや…ちゃんと男子高校生してるなーって思って」
西谷「んー?」
ゆうくんも立ち上がって、ポスターを一緒に覗き込む。
西谷「ブハッ!何これ、俺もやりてーっ!」
あなた「やめてください。切実に」
菅原「失望した?」
あなた「いえ……別に。菅原先輩は面倒見いいから今まで年下好きかなって思ってたし、木下先輩はなんか茶髪ショート好きそうだし、成田先輩はロリコンってどういう意味かわからないし、田中先輩はノーコメントで、縁下先輩は確かにツンデレ好きそうだし、大地さんに至ってはコレ、菅原先輩の字ですよね?」
田中「やめてやめて、心が傷つく……」
菅原「あーあ、女の子が来る前に外しとくべきだった」
後悔しても無駄ですよ。しっかり覚えてしまったので。
月島「…僕は引きましたけど」
日向「タイプってどういうこと!?ロリコンって何!?ツンデレって何!?」
山口「日向、落ち着いてっ!そのままでいて!」
影山「俺は……はがねタイプとか好きっすけど」
一年生も独特な反応。多分今は月島くんが1番まとも。
菅原「じゃーさ、あなたのタイプってどんな人?」
あなた「え、うちですか?」
よく考えてみる。
うーん…考えたこともなかったな。
アニメを見てカッコいいっ!!とかはなるけど、好きとかタイプとかとはまた違うだろうし…。
月島「……好きになった人がタイプ、とかじゃないの?」
あなた「あー!それだ!というわけで、うちのタイプは、『好きになった人』です!!」
そう言うと、皆はあからさまに頭を抱えた。
山口くんには「具体性ゼロ…」と言われたし、菅原先輩は「1番攻略が難しいやつじゃん!!」とよく分からないことを言っている。
あなた「あ、え……?じゃあ…優しい人……?」
それから1週間、皆が異常に優しくなったのは言うまでもない。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。