数日前の昼休み
いつものように教室でご飯を食べていると、訪問者がやってきた。
モブ「あなたちゃーん、先輩が呼んでるー」
あなた「ん?あっ、潔子さん!」
制服姿の潔子さんがこちらに手を振っている。
その美しさに皆が注目しているが、本人は気にならないようだ。
あなた「どうしたんですか?」
清水「あー、…ちょっと手伝って欲しいの」
あなた「…?」
清水「ついてきて」
体育倉庫にて
清水「…これなんだけど」
彼女が倉庫の奥の方から取り出してきたのは、大きな布の塊だった。
埃だらけで、しばらく使われていなかったようだ。
あなた「これは…?」
清水「これね、横断幕なの」
それを床に下ろし、ゆっくりと広げていく。
真っ黒の生地に書かれた、『飛べ』の2文字。
あなた「かっこいい…!」
清水「でしょ?これ、サプライズで皆に見せたいんだ。だから、クリーニングに一緒についてきて欲しいんだけど…」
あなた「はい、ぜひ!」
ん?でも…
クリーニングって、1人でも行けるんじゃ…?
清水「あなたちゃんといっぱいおしゃべりがしたくてさ。…ごめん」
ズキュンっ!
今、何かが射抜かれたような気がする。
あなた「ぜひ一緒にいかせていただくです」
清水「それ日本語?」
クスクスと笑う潔子さんに、また心臓を射抜かれるのでした。
〜現在の放課後〜
武田「…と、僕からは以上なのですが、…清水さん、兎和さん」
あなた「は、はいっ」
うちらは小走りで2階に上がり、大きな布を引っ張り出す。
皆は何があるんだろうと不思議そうにこちらを見ている。
うちらは横断幕の端をそれぞれ持って、ばっと広げた。
全員「「おおっ!!」」
あなた「ほら、潔子さんっ」
小声で彼女に言うと、彼女は恥ずかしそうに下を向いた。
清水「皆……頑張れっ」
彼女はそう言って、少しだけ頬を赤らめた。
そして、慌てて一階に降りていく。
5人「「……ぶしゃっ」」
いきなり涙を流し始めたのは、旭さん、菅原先輩、ゆうくん、田中先輩、澤村先輩だ。
あなた「何々!?」
澤村「清水ぅ!こんなの初めてぇぇ!!」
感動したようにわぁわぁと泣く主将。
ゆうくんと田中先輩は、だらだらと涙を流したまま固まっている。
月島「この人たち、声すら出てない…」
山口「普段はあんなにうるさいのに…」
5人「「うわあああああああん!!」」
すごい泣いてる…。
潔子さん、普段あんなこと言わないもんね。
わかる、うちもキュンとした。
影山「…あなたは何も言わないのか?」
あなた「うーん、うちはいいや。潔子さんのオアシスに感動していてくださいな」
日向「えー!俺あなたのも聞きたい!」
あなた「あとでね…!」
まずは、この泣いてる方達をどうにかしようぜ。
澤村「一回戦、絶対勝つぞー!」
全員「「おー!!」」
覇気の上がった皆に、潔子さんはさらに顔を赤くしている。
癒されるなぁ…。
日向「で、あなた、俺にもなんか言って!」
可愛い子にせがまれて、断る理由がございません。
あなた「がんばれ、日向くん!」
よしよしと頭を撫でると、彼はにかっと太陽のような笑顔を浮かべた。
菅原「え、俺も俺も」
あなた「頑張ってください、菅原先輩!」
菅原「撫でてくれないの?」
子犬のような目で見つめられ、グッと言葉に詰まる。
あなた「あの…しゃがんでもらえれば」
あなたの頭に手が届きません。
そう言うと彼はおっけ!と言ってしゃがみ込んだ。
そんなにしゃがまなくても…。
菅原先輩の柔らかい髪を撫でていたら、他の人達もやって来た。
ノヤっさん「俺もやってよあなた!」
山口「お、俺も…」
あなた「え、えええええええ!?」
オドオドと困っているうちを面白がっているそこの長身メガネ!
許さんからな!!
ーーーーーーーーーーーー
読んでくださりありがとうございました😊
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。