第39話

横断幕
4,830
2021/01/29 08:30

数日前の昼休み


いつものように教室でご飯を食べていると、訪問者がやってきた。


モブ「あなたちゃーん、先輩が呼んでるー」


あなた「ん?あっ、潔子さん!」


制服姿の潔子さんがこちらに手を振っている。


その美しさに皆が注目しているが、本人は気にならないようだ。



あなた「どうしたんですか?」


清水「あー、…ちょっと手伝って欲しいの」


あなた「…?」


清水「ついてきて」








体育倉庫にて


清水「…これなんだけど」


彼女が倉庫の奥の方から取り出してきたのは、大きな布の塊だった。


埃だらけで、しばらく使われていなかったようだ。


あなた「これは…?」


清水「これね、横断幕なの」


それを床に下ろし、ゆっくりと広げていく。



真っ黒の生地に書かれた、『飛べ』の2文字。


あなた「かっこいい…!」


清水「でしょ?これ、サプライズで皆に見せたいんだ。だから、クリーニングに一緒についてきて欲しいんだけど…」


あなた「はい、ぜひ!」


ん?でも…


クリーニングって、1人でも行けるんじゃ…?


清水「あなたちゃんといっぱいおしゃべりがしたくてさ。…ごめん」


ズキュンっ!


今、何かが射抜かれたような気がする。


あなた「ぜひ一緒にいかせていただくです」


清水「それ日本語?」


クスクスと笑う潔子さんに、また心臓を射抜かれるのでした。








〜現在の放課後〜


武田「…と、僕からは以上なのですが、…清水さん、兎和さん」


あなた「は、はいっ」


うちらは小走りで2階に上がり、大きな布を引っ張り出す。


皆は何があるんだろうと不思議そうにこちらを見ている。


うちらは横断幕の端をそれぞれ持って、ばっと広げた。



全員「「おおっ!!」」



あなた「ほら、潔子さんっ」


小声で彼女に言うと、彼女は恥ずかしそうに下を向いた。





清水「皆……頑張れっ」




彼女はそう言って、少しだけ頬を赤らめた。


そして、慌てて一階に降りていく。



5人「「……ぶしゃっ」」



いきなり涙を流し始めたのは、旭さん、菅原先輩、ゆうくん、田中先輩、澤村先輩だ。


あなた「何々!?」


澤村「清水ぅ!こんなの初めてぇぇ!!」


感動したようにわぁわぁと泣く主将。


ゆうくんと田中先輩は、だらだらと涙を流したまま固まっている。


月島「この人たち、声すら出てない…」


山口「普段はあんなにうるさいのに…」



5人「「うわあああああああん!!」」


すごい泣いてる…。


潔子さん、普段あんなこと言わないもんね。


わかる、うちもキュンとした。


影山「…あなたは何も言わないのか?」


あなた「うーん、うちはいいや。潔子さんのオアシスに感動していてくださいな」


日向「えー!俺あなたのも聞きたい!」


あなた「あとでね…!」



まずは、この泣いてる方達をどうにかしようぜ。









澤村「一回戦、絶対勝つぞー!」


全員「「おー!!」」


覇気の上がった皆に、潔子さんはさらに顔を赤くしている。


癒されるなぁ…。


日向「で、あなた、俺にもなんか言って!」


可愛い子にせがまれて、断る理由がございません。


あなた「がんばれ、日向くん!」


よしよしと頭を撫でると、彼はにかっと太陽のような笑顔を浮かべた。


菅原「え、俺も俺も」


あなた「頑張ってください、菅原先輩!」


菅原「撫でてくれないの?」


子犬のような目で見つめられ、グッと言葉に詰まる。


あなた「あの…しゃがんでもらえれば」


あなたの頭に手が届きません。


そう言うと彼はおっけ!と言ってしゃがみ込んだ。


そんなにしゃがまなくても…。


菅原先輩の柔らかい髪を撫でていたら、他の人達もやって来た。


ノヤっさん「俺もやってよあなた!」


山口「お、俺も…」


あなた「え、えええええええ!?」


オドオドと困っているうちを面白がっているそこの長身メガネ!


許さんからな!!













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