月島くんが進化した。
そう思うのは、きっと自分だけではないだろう。
何度も何度もブロックを飛んで、その指にテーピングをして。
それから、何度も何度もまた飛んだ。
そして、その日の練習は終わった。
あなた「日向くん、あのね、速攻の時なんだけど_________」
日向「おぉっ!あざす!!」
ー音駒との試合にてー
日向「センター!!」
田中「オーライっ、日向ッ!!」
田中さんのアンダーでボールが上に飛び、そして日向くんがそれに合わせて宙を舞った。
その時__________彼から、ただならぬ圧を感じて。
ブロックに入った研磨くんもそれに気づいて、一瞬、ハッと恐怖を感じたような顔をした。
しかし……そのボールはラインを越え、アウト。
2点差で、音駒の勝利となった。
日向「クッソー!」
日向くんは悔しがっていたけど、黒尾さんはその姿を見ながら研磨に近寄って。
『いよいよ油断ならないな』と、日向くんをあげるようなことを言っていた。
谷地「……やったね」
あなた「うん」
武田「あ、兎和さん」
突然武田先生に呼ばれ、ふいっと振り返った。
武田先生は小柄なその身体を縮こませて、申し訳なさそうに言った。
武田「あの……実はですね、この学校、ほとんどの教室が教材置き場とか皆が寝る場所とかで埋まってしまってて。マネージャーも、4人までしか入れなくてですね……」
4人……つまり、今回合宿に参加しているマネージャーは、1人余ってしまう。
その1人がうちなのだ。
あなた「じゃあ、どうすれば…?」
武田「あの、非常に申し訳ないのですが、男子と同じ部屋というのは……ああっ、ほんとすみません‼︎
あの、土下座、土下座、」
あなた「しなくて良いですから!!寝ますから!!」
武田「す、すみません」
先生に謝らせてしまうなんて、流石にこっちも引けないよ。
それに、男子と寝るのは初めてのことではないし。
うちは、(外から見ればだけど)快く引き受けた。
……皆とガールズトークしたかったな。
あなた「失礼しまーす」
山口「あなたちゃん、何でタオルケット持ってきてるの?」
あなた「ここで寝ようと思って」
田中「生憎ここはもうぎゅうぎゅうなんだよなぁ。俺と一緒に寝てもi」
あなた「あっ、失礼しました」
田中「話聞けよ!!!」
あなた「すみません。ここって空いてますか?」
木兎「ヘイヘイヘーイ!!あなたー、タオル巻いたやつでバレーやってんだけど、あなたもやる!?」
あなた「……失礼しました」
あぁ………残るは音駒となってしまった。
実際よくよく考えてみれば、音駒が1番常識人が多い気がする。
いや、梟谷も多いけど、それを木兎さんが全部かっさらってるから。
あなた「はぁ………失礼しまぎゃああああああ!!!!」
学校に、うちの断末魔が響いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!