あなた「おむっ、お邪魔しまぁす!!」
噛み噛みなのを誤魔化しつつ,双子の家へと足を踏み入れる。
彼らの家は年季が入っている木造建築だった。庭には色とりどりの花が咲いていて,ふと見ただけで心が癒される。
侑「あっ、あなたー!!……と、なんで角名がおんねん」
角名「いや……来いって言われたし」
侑「………付き合うとるん?」
角名「は」
あなた「へ」
じわっと頬が熱くなり、ぎゅっとジャージを掴んだ。
違うよ………
角名「……そうだけど」
あなた「は?」
双子「「はぁ?」」
角名「人の女に無許可で触るなんて,しないよね?」
あなた「り、…倫くん……?」
倫くん以外の3人(うち含め)は、ただただポカンと口を開けたままだった。
侑「あ''ーっ、誰やねんここにリンゴジュース置いたん!!」
治「自分で置きよったやろーが」
あなた「ねーねーコレ飲んでいい?」
角名「待ってそれお酒じゃない?」
侑「角名!!ひとんちでイチャつくなやぁ!!」
角名「してない」
治「あなたー、裏庭にやっと人馴れした野良猫おんねんけど,触る?」
あなた「おぉっ」
侑「抜け駆けやめぇやー!」
………騒がしい。(←元凶)
でも楽しいなぁ。わちゃわちゃしてるのを見るのが1番好きかも……なんて、縁側に座って猫を撫でながら考える。
その赤茶の猫さんはゴロゴロと喉を鳴らし,大人しく撫でられている。
そしてその様子を微笑ましく見ている治くん。
奥の方からは,まだ2人が争っている音がする。
倫くん、なんであんなこと言ったんだろう………
もしかして、うちを双子から守ろうとしてくれたのかな?
侑くんたちが急にグイグイくるから、それから守ろうとしてくれただけなのかも。
大丈夫なんだけどなぁ……ってことは、一応内緒にしておく。うちのためにやってくれたことだからね。
治「………にゃ」
あなた「え?」
治「……猫やったら撫でてくれるんやろ?」
………?
治くんはうちより目線を低くして,上目遣いでうちの(侑くんのだけど)ジャージを掴む。
あ、もしかして。
あなた「……撫でて欲しいんですか?」
治「………」
何も言わない。
スッと視線を逸らした治くんを見ると,図星みたいだ。
何故か彼のお尻に尻尾が、頭に猫の耳が見えた気がした。
黙って撫でてみると、治くんは嬉しさを噛み締めるみたいにきゅっと唇を噛む。
その頬は、すこしだけ赤くて。
……ちょっと、可愛いな。
右手で猫を,左手で治くんを。
それから数分後,倫くんと侑くんに引き剥がされたのは言うまでもない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。