第172話

月の輪
2,153
2021/07/29 22:00

第一セット  16対25 白鳥沢の勝利。



ウシワカの左利きに対する対策が出来ておらず,クレバーすぎるブロッカー天童覚が現れボロ負け。







そして,第ニセット_____________






は、月島くんが脅威の成長を見せていた。



ひたすらにボールを触り,「ワンチ!」と叫ぶ。


流石にそれにイライラしてくるか,天童さんもしつこいと思っていることだろう。




月島くんはどんどんワンチを繰り返し、それを誰かがカバーして点を稼いでゆく。


しかし、白鳥沢も取られっぱなしというわけではなく,どんどんアタックを決めてくる。


でも、第一セットでボロ負けだった烏野が点を稼いでいくことに,彼らも少し焦りを感じ始めているだろう。




月島くんは、明らかにチームの人とコミュニケーションを取り始めている。


彼なりの作戦を伝えているのだろう,そのクレバーな彼の考えに皆は乗り,点を稼いでいる。


月島くんは白鳥沢に、絶対に達成感を与えないようにプレイしている。だからワンタッチを繰り返して,アタックの快感を防御しているのだろう。



うちの隣にいる月島くんのお兄ちゃんは、すでに目をうるうるさせている。


顔立ちは似てるけど、あんまり中身は似てないな………(失礼)。






そして、白鳥沢のセッター______________いや、白鳥沢全員に,苛立ちと焦りが生じた時。




セッターである白布さんはボールをトスする。ウシワカが走り出す。



ウシワカが打ったボールを











月島くんが、体の軸を捻じ曲げてブロックした。














『たかが部活。本気でやるから、あとで苦しくなるんだろ』





『僕はいいです』





『皆どんな原動力で動いてんだよ!!』









お兄さんに憧れて失望して,本気でやることが嫌になって。



勝利に絶対にこだわらなかったのに。


















月島「っしゃああああああああ!!!!」








_______________…!!







彼のはじめてのガッツポーズをみて、ぽろりと何かが溢れた。





あなた「っしゃ〜……!!」




うちも真似て,ガッツポーズをする。







月島くんが田中先輩やゆうくんに噛みつかれながら、ふとこちらを振り返る。


隣のお兄ちゃんが慌てて隠れた。




うちは、彼に第二セット奪取の『おめでとう』をこめて、思いっきりピースをした。



彼は「何泣いてんの」,とでも言いたげに,べっと小さく舌を出したのだった。










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