その日の夜、第3体育館には、いつものメンバーと日向くん、リエーフくんが来ていた。
今は練習が終わり、休憩をしているところだ。
月島くんは、今までよりはるかに多くボールを止めている。
彼も……進化の過程に立っているのかなと思うと、少し嬉しくなる。
黒尾「スパイカーと一対一の時は、基本的に相手の身体の正面じゃなく、利き腕の表面でブロックすると良いぞ」
あなた「なるほど…メモメモ」
月島「あの、一応、僕ら試合になったら敵同士ですよね。どうしてアドバイスまでしてくれるんですか」
黒尾「僕が親切なのは、いつものことです」
胸に手を当て、無駄に神々しい黒尾さん。
それを見て、月島くんは「は?」とでも言うような冷たい視線を向けた。
黒尾「何もそんな目で見なくても……ゴミ捨て場の決戦ってやつをさ、実現したいんだよね。うちの監督の念願だし、監督は、あとどんくらい現役でいられるか分かんないしさ。それにはお前らにも、勝ち上がってもらわなきゃなんねーだろ。まー俺の練習でもあるわけだし、細かいことは気にすんなっつーの。練習練習!」
今日も色んなことを学んだ。
リバウンドとか、ブロックを避けるための打ち方とか。
このノート、結構埋まってきたな。
新しいやつ買おうかな。
あなた「お疲れ様です」
はい、とドリンクを渡した時、ぐぅ〜…と小さくお腹が鳴った。
幸い皆には聞こえてなかった。
黒尾「チビちゃんもツッキーも、進化してきてるな。黒尾さんは嬉しいです」
あなた「黒尾さんのアドバイスが上手いからだと思いますよ。多分、2人の飲み込みが早いってのもあるけど…」
木兎「俺いつかの試合でツッキーにスパイク止められんのかなー。やだなー」
赤葦「って言ってる暇があるなら練習しますか?」
木兎「俺疲れた!!」
赤葦「知ってるから言いました」
うちは、早速校内に戻ろうとした月島くんに声をかける。
あなた「月島くん、もう帰るんですか?」
月島「ん。お先に」
あなた「じゃあうちもっ…!」
黒尾「月島くんのこと大好きなんだね」
ぐいっと後ろからジャージの襟を引かれ、引き戻される。
月島くんはそれに構わず、さっさと体育館を出ていく。
それに続き、日向くんとリエーフくんも競争するように走っていった。
あなた「大好きって…」
黒尾「ずっとツッキーに着いていくじゃん。親鳥とひよこみたい」
ひ、ひよこ?
赤葦「確かにですね。ひよこさんって呼びますか」
木兎「いーじゃん!!ひよこ!」
あなた「えぇ!?」
木兎「というわけでひよこ!今日梟谷の部屋に来いよ!」
あなた「う、うちがですか?でも、ちょっと用事が…」
黒尾「用事とは?」
あなた「んー…」
少し考え込んで、立てた人差し指を口元に持っていく。
あなた「ナイショ、ですかね」
3人「「!!!」」
黒尾「……お嬢さん、そんなんだと本当に危ないですよ?」
あなた「危ないんですか?」
赤葦「セコムが必要ですね」
木兎「せこむってなんだ!?」
あなた「危ないかぁ…確かに、いっつも転ばないように気をつけてるっちゃあ気をつけてるんですけどやっぱり転んじゃうんですよね」
黒尾「そういうことじゃねーよ」
そういって、黒尾さんに急に手首を掴まれ、壁に押しつけられた。
あなた「な、なんですか!?」
黒尾「さーね」
赤葦「あ、それ俺もします」
訳が分からず混乱するうちに、黒尾さんは不敵に微笑む。
そしたら、さらに赤葦さんも加わって。
赤葦さんのしなやかな手により、顎をクイッと上に持ち上げられた。
ええっ、本当に何……!?
木兎「俺も混ざるー!」
…本当に何も分かっていなさそうな木兎さんまでもが、ちょう至近距離に顔を持ってくる。
黒尾「お嬢さん、顔真っ赤ですけど、熱ですか?」
あなた「ちがっ、じゃなくて、」
赤葦「可愛いですね、ひよこさん」
あなた「え、あ、」
どうすれば良いのか分からず、カチンコチンに固まるうち。
せめてもの木兎さんっ、どうにかして助けてくださいよ…!!!
その時、彼らは誰かによって押しのけられて_____________
菅原「何してるんですか?俺らのマネージャーに」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。