第91話

月島くんの過去
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2021/03/28 22:00

もやもやとした気持ちのまま迎えた朝。


各校のマネージャーは、ご飯を注いであげたり料理を作ったりする役割があるため、うちはそっちの仕事にまわっている。

近くの机では、大盛りのご飯をよそったゆうくんが、早速月島くんにちょっかいをかけていた。



西谷「おい月島ぁ!もっと食え!もたねぇぞ!!」


月島「西谷さん、『胃』は大きいんですね」


西谷「なんだとぉ!?」



あーあー、また煽っちゃって…。


日向くんみたいに素直になれないのかなぁ。


ほら、今も。日向くんは、生川の可愛らしいマネージャー、宮ノ下さんにドギマギしている。



そして怒ったゆうくんは、月島くんの眼鏡を上に持ち上げて遊んでいる。


月島「ちょおっと!やめてください!」


菅原「大地に怒られるぞー」



あなた「もー…」


白福「あなたちゃん、卵焼き作ってるのー?」


後ろから、ひょこっと梟谷のマネである白福さんが覗く。


あなた「はい。…食べますか?」


白福「やったー!……って美味し」









今日も惨敗。


ひたすらにペナルティ三昧の日であった。


「みなさーん!森然高校の父兄の方から追加の差し入れでーす!」


そう言いながら体育館に入ってきたのは、大量のスイカを持った、梟谷と生川のマネさん。


皆はそれに、パアッと顔を輝かせた。





日向「(パクッ」


坂道ダッシュに使われる坂に皆で座り、スイカを頬張る。


大きな一口でかぶりつく日向くんも、スイカの一切れを口に加えてもぐもぐする研磨くんも、まじで可愛い。



あなた「あれ…月島くん、もう良いんですか?まだスイカありますけど…」


月島「…良い」


スイカの皮をゴミ袋に捨て、戻ろうとした月島くんに声をかける。


あなた「そっか」


多分今は、そっとしておいた方がいいだろう。



少し遠くでは、黒尾さんが澤村先輩達に謝っているのが聞こえた。


黒尾「すまん。昨日、お宅の眼鏡君の機嫌損ねちゃったかもしんない。実はさぁ…」




澤村「…へぇ。あの月島が自主練に付き合ったのか。で、何か言ったのか?」


黒尾「お宅のちびちゃんに負けちゃうよって挑発を」


旭「たしかに月島は日向に引き目を感じてるとこあるよな」



んー……月島くんは背も高くていろんなボールを制御出来て、日向くんよりは有利だと言える。


なのに、なぜ既に負けていると思っているのか、引き目を感じているのか、それがまだうちには分からない。


田中「あっそれ、関係あるか分かんないすけど、うちの姉ちゃんが『月島の兄を知ってる』って」


澤村「月島の兄貴が?」


田中「でも分かんねーすよ。苗字が同じだけの、別人かもしんねーし」


お兄ちゃん…。


本当か分からないけど、聞いてみる価値は無いわけではない。



うちは、先に体育館に戻った月島くんを追いかけた。








あなた「…ここに居ましたか」


月島くんは皆が居るところとは反対側の、手洗い場のところに座っていた。


木陰もあり、涼しくて心地がいい。



月島「………何で来たの」


あなた「……月島くん、お兄ちゃん、居ますか?」


彼の雰囲気が少し変わった気がした。


誰も通したくない壁が、いつもより強く感じる。


さらに、言葉も刺々しくなった。



月島「…居るけど。それが何?関係あんの?」


あなた「お兄ちゃん、バレーしてたんですね。今もやっているんですか?」


月島「もうやってない」



『入ってこないでよ』。



彼の心の声が聞こえた気がして、うちはそれ以上掘り起こすのをやめた。



あなた「……本気で物事をやるの、楽しくないんですか?」



月島「何で皆本気でバレーしてるのか分からない。たかが部活。本気でやるから、後で苦しい思いをするんだろ」



月島くんが言っていることを否定できなくて、何も言えなくなった。


あの時、青葉城西と戦った時。


負けたことが、本当に悔しかった。


それは、皆が頑張っているところを見てきたから感じたこと。


皆がバレーを本気でやっているところを見なければ、負けの『悔しさ』を、知ることは無かった。




あなた「……そっか。…あ、もう次の試合始まるみたいだよ。ほら、行こ」





今のうちは、『月島くんの世界に入った不法侵入者』かも知れない。



でも、彼はうちが差し出した右手を。



ぎゅっと、握ってくれたんだ。













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読んでくださりありがとうございました!


なんかリムられ期来た( ; ; )

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