あれから、1週間が経った。
白布さんからは、たまにメールが来るようになった。大体はウシワカさんの素晴らしさを語っているだけである。
そして今日は,宮城を旅立つ日。
今日から1ヶ月間、うちは兵庫で過ごすことになる。
今ちょうど,荷物をまとめ終わったところだ。
あなた「ふー……あ、これも持ってかなきゃ」
と言って,二冊分にまとまった『バレー研究ノート』をカバンに詰め込む。
実はこれにはバレーのコツとか技だけでなく,色んな思い出まで書いている。
影山くんと日向くんが肉まんの取り合いをしていた、とか。
月島くんが心配してくれた,とか。
………菅原先輩に告白された,とか。いわば、自分の日記のようなものである。
母「準備できたー?」
あなた「うん!」
そう返事をして,少量の荷物を下に持っていく。大きな荷物は,すでに兵庫の方に届けてある。
母「そういえばね、お父さん今日出張に行っちゃってるから,1週間後くらいに兵庫に来るみたい」
あなた「了解」
ビシッと敬礼。
それから戸締りを確認して,お母さんより先に外に出て、門を開ける。
壁に寄りかかっていたのは,月島くんだった。
月島「………あ、」
あなた「つ、月島くん…なんで?」
一応,このことはバレー部の人たちには伝えておいた。
でもさすがに、ここまできてくれるとは思わなくて。
月島「…ちょっと待ってた」
あなた「ご、ごめん…?」
月島「……早く帰ってきてよ」
あなた「うん」
月島「なんでちょっと泣きそうになってんの(笑)」
あなた「う、うれしいから……」
涙が溢れるのを我慢して、ぎゅっと唇を噛んだ。
1ヶ月だけなのに……やっぱり、寂しいかも。
月島「おいで」
あなた「……んっ」
両手を広げた月島くんの胸に思いっきり抱きつくと,彼も抱きしめ返してくれた。
月島「………行ってらっしゃい」
あなた「…行ってきます」
日向「おいツキシマー!!何やってんだよー!」
影山「ボゲェ!!月島ボゲェ!!」
山口「あなたちゃん、ツッキー……ごめんね、止めようとしたんだけど、」
茂みの中から顔を出したのは,頭にたくさん葉っぱを付けた一年生だった。その後から,仁花ちゃんもこっそりと顔を出す。
谷地「あなたぢゃん…わだじ、ざみじいでずうううう」
あなた「仁花ちゃん……笑」
母「あら、皆来てくれたの。あなた愛されてて良かったねぇ」
その後から出てきたお母さんは、その光景を見てクスリと笑う。
影山「今のはなんだよ月島」
月島「は?盗み見とかありえないんですけどー」
日向「見て影山!青いちょうちょ!!」
影山「あ''ぁ!?」←怒りつつも蝶に夢中になる影山
山口「2人とも、いま朝だから…」
谷地「私っ、1ヶ月も我慢できないなんてっ、ちびっこいノミの存在ですすみまぜえぇぇん!」
母「……この子達といつもつるんでるの?」
あなた「あ、あはは……」
ちょっとうるさかったけど。
でもこの騒がしさが、やっぱり恋しかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!