第188話

行ってきます
2,096
2021/08/14 22:00

あれから、1週間が経った。


白布さんからは、たまにメールが来るようになった。大体はウシワカさんの素晴らしさを語っているだけである。









そして今日は,宮城を旅立つ日。


今日から1ヶ月間、うちは兵庫で過ごすことになる。


今ちょうど,荷物をまとめ終わったところだ。



あなた「ふー……あ、これも持ってかなきゃ」



と言って,二冊分にまとまった『バレー研究ノート』をカバンに詰め込む。


実はこれにはバレーのコツとか技だけでなく,色んな思い出まで書いている。



影山くんと日向くんが肉まんの取り合いをしていた、とか。


月島くんが心配してくれた,とか。


………菅原先輩に告白された,とか。いわば、自分の日記のようなものである。




母「準備できたー?」


あなた「うん!」



そう返事をして,少量の荷物を下に持っていく。大きな荷物は,すでに兵庫の方に届けてある。


母「そういえばね、お父さん今日出張に行っちゃってるから,1週間後くらいに兵庫に来るみたい」


あなた「了解」



ビシッと敬礼。


それから戸締りを確認して,お母さんより先に外に出て、門を開ける。




壁に寄りかかっていたのは,月島くんだった。






月島「………あ、」


あなた「つ、月島くん…なんで?」




一応,このことはバレー部の人たちには伝えておいた。


でもさすがに、ここまできてくれるとは思わなくて。



月島「…ちょっと待ってた」


あなた「ご、ごめん…?」


月島「……早く帰ってきてよ」


あなた「うん」


月島「なんでちょっと泣きそうになってんの(笑)」


あなた「う、うれしいから……」




涙が溢れるのを我慢して、ぎゅっと唇を噛んだ。


1ヶ月だけなのに……やっぱり、寂しいかも。




月島「おいで」



あなた「……んっ」



両手を広げた月島くんの胸に思いっきり抱きつくと,彼も抱きしめ返してくれた。






月島「………行ってらっしゃい」


あなた「…行ってきます」







日向「おいツキシマー!!何やってんだよー!」


影山「ボゲェ!!月島ボゲェ!!」


山口「あなたちゃん、ツッキー……ごめんね、止めようとしたんだけど、」




茂みの中から顔を出したのは,頭にたくさん葉っぱを付けた一年生だった。その後から,仁花ちゃんもこっそりと顔を出す。



谷地「あなたぢゃん…わだじ、ざみじいでずうううう」


あなた「仁花ちゃん……笑」




母「あら、皆来てくれたの。あなた愛されてて良かったねぇ」



その後から出てきたお母さんは、その光景を見てクスリと笑う。



影山「今のはなんだよ月島」


月島「は?盗み見とかありえないんですけどー」


日向「見て影山!青いちょうちょ!!」


影山「あ''ぁ!?」←怒りつつも蝶に夢中になる影山


山口「2人とも、いま朝だから…」


谷地「私っ、1ヶ月も我慢できないなんてっ、ちびっこいノミの存在ですすみまぜえぇぇん!」




母「……この子達といつもつるんでるの?」


あなた「あ、あはは……」






ちょっとうるさかったけど。




でもこの騒がしさが、やっぱり恋しかった。










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