第7話

明日の私は
15
2020/04/07 07:05
高校生になって足は完治した。だから、体育もできるし、普通に走れるようになったが、あの頃と比べると格段に足が遅くなり、走れる距離も減った。
大丈夫かな、これ以上のペースは危ないかな、どれくらい行ったら足がまた駄目になっちゃうのかな。
そういった不安が私の枷となったが、もう陸上部ではないのでさして問題はなかった。
でも、拓也が現れた。
拓也は私を見つけて、毎日陸上部に勧誘してきた。この高校では陸上部の人気が少なく、男女混合で練習をしていて、総勢7人しかいないそうだ。
私は鬱陶しくて拓也をぞんざいに扱って追い返した。しかし、懲りずにまたやって来る。私はそれを追い返す。そんなことをしているうちに、拓也が無茶な自主練習をしていることを知り、心配になった。
私みたいに体を壊してしまったら大変だ。走ることが大好きな拓也が足を壊したりしたら、どんなに辛いことか。そうして終わっていく拓也なんて、見ていられない。
だから私は今日も拓也の練習を見守る。何言っても止まらないけど、なにかせずにはいられなかったから。
___このままじゃ駄目なのは分かってる。
乗り越えなきゃいけないのはとっくの前に分かっていたさ。でも、あの瞬間が私を苦しめる鎖のように心を捕えてしまう。。焦って、怖くて、辛くて、悲しくて、無気力になる。
もう何もしない。
そう決めたのに、拓也の練習に対する熱意がだんだんと私の心にエネルギーを与えた。
本当にこれで良いのか。深い思考でそう自問自答すると、気がつけば私は走っていた。
だから答えは否なのだろう。
高校に入って1年も経ってしまったが、今からでも遅過ぎはしないはず。
昨日先生に言われた通り、私はそろそろ前に進むべきなんだ。
「ねぇ、拓也。もし私が陸上部に入るって言ったらどうする?」
すると私の隣で水を飲んでいた拓也は、一瞬驚愕の表情をしたが、すぐにニッと笑って
「そりゃあ、大歓迎だ!」

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