冷え切った拓也をベットに捨てると、先生が「いつも大変ね。」と温かいお茶をそっと差し出す。
「本当に大変ですよ。拓也は毎回無茶をするので。」
「あら、まあ···」
ニコニコと先生は笑うけれど、実際大変なのだ。何言っても聞かない。何をしても止まらない。倒れた後に回収してくれる人は、私以外いないときたものだ。
別に嫌味で言ってるわけではない。
ただ、もし私が居なかったらどうするんだ。
···体を壊したら、どうするんだ。
そう思うと、私は心配なんだ。
すると先生は、じっと私を見つめて
「そうね。貴方だから余計に心配よね。」
ぐっと、湯呑に伸ばした手を握り締め、私は努めて平静な表情を作る。
「はい。そうですね。」
「···ねぇ、やっぱり貴方も部活に入ったらどう?もう、大丈夫なんでしょう?」
「·········。」
「そう。まあ、貴方も無理はしない方がいいわね。でも、いつまでもこのままでは良くないってことは分かってるでしょ?」
重い頭で、私は無言で頷く。
「分かっているなら、良いのよ。」
先生はそう言うと、もう遅いから帰りなさいと濡れた為ストーブの前で干していた私のコートを渡して、片付けを始めた。
暗い校舎を歩き、ふと掲示板が目にとまる。そこにある張り紙を見て、どうしようもなく胸が痛くなる。何かに追い立てられるかのように、私は走った。
_____私は、どうしたいんだろう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。