第6話

夢 3
14
2020/04/03 01:35
私は、馬鹿だった。
彩奈先輩の最後の言葉を真に理解していなかったのだ。上っ面だけ、薄っぺらく受け取って、分かった気になっていたんだ。
それを身を持って知ることになったのは、全国大会の地区予選の3日前、練習中に左足の靭帯をやってしまったときだった。










私は部長となり、皆をまとめ上げようと努力した。例えば、明るく笑い親しみやすい先輩になろうとしたり、練習では率先して辛いメニューをすることで、部活の空気が弛み過ぎないようにしたりした。
実際、とても良い部活だったと思う。仲良く、練習も真面目で、充実した日々だった。
でもあの日、私は全て失った。
最後のチャンスだから、特に気合を入れて練習していた。ふらふらになっても走り続けた。だが、それが仇となってしまった。
ふらついて倒れかけた体を、無理やり立て直そうと左足をついたとき、靭帯を痛めた。そして、とてもじゃないが地区予選出場は無理だと言われ、呆気なく私の夢は破れた。
絶望している私に、仲間たちは気を使ってか声を掛けてきた。
「先輩、次がありますよ。高校で陸上部に入ればまだチャンスがあります。」
「そうだよ、諦めるのはまだ早いって。」
___あなた達に何が分かるの?
陸上部にとって足はとても大事。その足が駄目になったのだ。治っても壊した瞬間やまた壊すかもしれないという不安が付きまとう。そんな状態で、まだ続けろと、次があると言われる。私は、思わずハハッと笑ってしまった。
___先輩が言っていたのは、こういうことだったのか。
今更理解したって、どうしようもない。ただ、空虚な笑いだけが込み上げてくる。
私の心はもうポッキリと折れてしまったのだ。

プリ小説オーディオドラマ