教室の窓から遠くに見えるサッカー部を見つめてニヤつく私に、美紗は呆れた顔で言った。
拓哉は幼馴染みで家も隣。
小さい頃から好きだったけど、そんなこと本人に言えるわけないから、ずっと気持ちが伝えられないまま高校生になっていた。
美紗が指さした先には、ボール避けのネットの後ろで拓哉に熱い視線を送る女子たち。
毎日、練習が終わる拓哉を待ってプレゼントを渡したり、話したりしている。
アイドルとオタクみたいな、そんな感じ。
美沙は近くにあった机に腰掛けて、遠くの女子たちを指さす。
ずっと言われてきた。
人気者の拓哉だから、私がずっと好きだったとか拓哉のことよく知ってるとか・・・そんなの全然関係なくて、ノロノロしてたら他の子に取られちゃうよって。
だけど、この関係が壊れるのが怖くて気持ちを伝えられなかったんだ。
拓哉が終わるタイミング見計らったなんて言えなくて、偶然を装った。
そう言って悪戯っぽい顔で笑う拓哉。
この顔が1番好きだったりする。
私の頭を軽く突っつく拓哉。
この関係が心地よくて、この関係が壊れないようにいつだって必死に"幼馴染み"を演じてたんだ。
校門を出ようとした時だった。
同じ学年の女の子が拓哉に声をかける。
たぶん拓哉と同じクラスの子。
ちらっと私に目をやる女の子を見て、
きっと告白なんだろうなって勘づいて胸がチクリと痛んだ。
戸惑う私をよそに拓哉は「ただの幼馴染み」と間発入れずに言い放った。
それが辛くて、幼馴染み以上の気持ちを持ってはいけない気がして、今にも溢れそうな涙を堪える。
そう言って、私を留まらせると、拓哉は声をかけてきた女の子と一緒に少し離れたところに向かった。
拓哉の前で顔を真っ赤にして立つ女の子。
「拓哉が取られちゃうかもしれない」
そう思ったら、また胸が締めつけられる感じがした。
見ていたくないのに二人から目を逸らせないでいると、女の子が笑顔で拓哉に飛びつく姿が目に映った。
「取られちゃうよ」
何回も何回もみんなから言われた言葉。
だけど、本当に取られるなんて思ってなくて、どこか拓哉は離れていかないような気がしてて・・・
だけど、そんなの間違いだったんだ。
その場に居るのが辛くて、拓哉を置いて走ってその場から逃げた。
追いかけてきてくれた拓哉に、私は慌てて涙を拭き取って笑顔を見せた。
「断った」って言葉は嬉しいのに、
「好きな子がいる」ってその一言で、私の失恋が確定した。
隣を歩いてたはずの拓哉が私の前に向かい合って立った。
私が好きな悪戯っぽい顔で笑う拓哉。
拓哉が私の頬に触れて、自分が涙を流していたことに気がついた。
拓哉は私をギュッて抱きしめた。
そう言って、私を抱きしめる手に力を入れた。
そう言って拓哉は悪戯っぽい顔で笑って、私にキスをした。
私たちの関係はこれまでと同じ。
だけど、少しだけ前進した気がした。
fin.
——————————————————————–+++
春さんリクエスト、
西村拓哉くんの小説でした★
リクエストからものすごーく時間かかってごめんなさい💧
西村くん勉強不足で難しい💦
カッコイイ幼馴染みをイメージしました!
イメージ全然違ったらごめんなさいm(_ _)m
みなさん感想&いいねくれたら嬉しいです♪
お待ちしてます!
+++–——————————————————————
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。