久しぶりの蒼弥とのデート。
大好きな動物園に来て、私はテンションが上がっていた。
ペンギンゾーンに駆け寄った私の後ろから歩いて着いてくる蒼弥。
クールというか、なんというか・・・
いつもこんな感じだから、クラスの友達にも熟年夫婦みたいって言われたりする。
ペンギンの声マネを始めた蒼弥。
想像以上に大きな声で真似するから、一気に周りの視線が集まった。
私に向かってふっふっふって不敵な笑みを浮かべる蒼弥。
なんだか嫌な予感がする・・・
嫌な予感的中。
蒼弥はいろんな動物の真似を私にさせては、おもしれぇーってお腹を抱えて笑い出す。
ちなみに、今はカバの前。
大きな口を開けてキャベツを食べるカバの真似をさせて、手まで叩いて笑っている。
そう言って今度は先を歩き出す蒼弥の後を歩いた。
たしかに先に真似してって言ったのは私だけど、仕返しの度が過ぎるんだよっ、バカ蒼弥っ!
少し歩いた所で私が着いてこないことに気づいた蒼弥は、私の元まで戻ってくると、私の目の前で屈んで視線を合わせる。
拗ねたまま歩かない私の手を掴むと、蒼弥は歩き出す。
手を繋いだだけで、ちょっと機嫌が戻る私はかなりチョロいと思う。
手を繋いだまま蒼弥と動物園を歩いた。
広い敷地を自由に動き回るチンパンジー。
走り回ってる子がいたり、遊具で遊んでる子がいたり。
なんだかまるで幼稚園みたいで微笑ましい。
そう言って手すりに肘をついて身を乗り出すようにチンパンジーを見て笑い出す蒼弥。
真似してないのに似てるって・・・。
機嫌がまた悪くなって、段々眉間にシワが寄る。
せめて子供のチンパンジーとかさ、可愛い要素多めのチンパンジーって言われるならまだ救いようがあるけどさ・・・
彼が指を刺したのは遊具の上で仰向けになってる大柄のチンパンジー。
さすがに煽りすぎな蒼弥にムカついた私は、ひとりで先を行こうとした。
なのに、蒼弥は先をいこうとした私の手を掴んで引き寄せると、
って、耳元で囁いたんだ。
口ではそう返すけど、ちょっと嬉しくて顔が緩んでしまう。
ヨシヨシって小さい子をあやすように私の頭を撫でる蒼弥。
悔しいけど、カッコイイから、さっきまでの怒りなんてどこかに吹き飛んでしまった。
即答で、むしろ少し食い気味にそう言った蒼弥。
蒼弥が1番好きな動物であるチンパンジーに似てるって言われて、ちょっと嬉しくなってたのに、キスは出来ないって・・・
また私のテンションは下がっていく。
なんかもう感情迷子。
怒りでも、悲しみでもない感情に耐えられなくて俯いた私。
そんな私の顎を持って私にキスをすると、蒼弥は周りに聞こえないくらいの声で言葉をこぼした。
顔を赤めた私を見て、ニヤリと笑った蒼弥は、
世界で一番イジワルで、世界で一番優しい人。
fin
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ガオちゃんさんリクエスト、
猪狩蒼弥くん小説でした★
動物園デートのお題をもらいまして、
なんとなく猪狩くんのイメージがツンデレなので
こんな感じに仕上げてみました💚
お待たせしてごめんなさい🙏
みなさん感想やいいねくれたら嬉しいです♪
お待ちしてます!
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。