書類を届け終わると そのまま手を引かれて
ひと気のない長い廊下を歩く。
「どうよ? イイっしょ、こういうの」
「ふざけ、ないで⋯⋯っ」
「なぁんでそんな怖い顔してんの」
智はそう言うと
私の腰を引き寄せて 優しく唇を重ねる。
でも 深くなっていくと思ったそれは
呆気ないくらいに すぐに離れて。
「なんで翔ちゃんち行ったの、」
いつもより低い声で ぽつりと呟いた言葉は
私に届かないくらい小さくて。
「行ってないって⋯⋯」
「でもヤったんでしょ」
どーせ おれのより良かったんでしょ、
って今度は子どもみたいに口を尖らせる。
「っ違う、それは⋯⋯」
「それは、なに」
「翔くんが、ぁっ、ん、翔く⋯⋯」
突然 快感がもうすぐで解けそうになって
ふっ て息を吐いて 智の背中に回した腕に くっと力を込めると。
「あーもう、イっちゃだめ。
しかも何で他の男の名前呼びながらイこうとしてんの」
リモコンを取り出し スイッチを切ると
息がととのわないうちに また ブィーンと動き出す。
「ん、ぁっ、も、やめて⋯⋯っ」
「んなえっちぃ声出したら聞こえるって」
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。