『ただいまー』
「おかえり!今日は本当にありがとな!翼!」
『いやそれより、兄貴、今日海外行くんでしょ?』
「ああ、今からなんだ。と言うことで行ってくる!」
『ん。いってらー』
『うーん…暇だなぁ…何しよ…
…そうだ、庭でバレーしよう』
そして、バレーボールを持って着替えた。だって、何もすることなくて、暇だったから。
そして庭へ行こうと玄関を出ると、目の前に黒髪の男が現れた。
『うわっ』
「うおっ…ビビった」
『って、クロ。私の家の前で何やってんの?』
「お前こそ、こんな夜に一人でどこ行くつもりなんだよ?」
『私は、暇だから庭でバレーしようかな〜って…一人でも面白くねぇし、クロもしようぜ』
「そうだな。俺も暇だし。」
『研磨も誘おうぜ』
「…研磨は寝た。」
『えー…まあいいや。じゃあ二人でやろう!』
そして私と黒尾はバレーを始めた。
研磨がいたら3人で練習してたんだけどなぁ…
黒尾 対 私の1対1はきつかった。
『あー…1対1しんど…』
「でもまあ、2回までボール触っていいルールだったし?」
『でもこりゃあしんどいわ…』
プルルル…プルルル…
そんなことを話していると、家の中からこんな音が聞こえたきた。
「家の中でなんかなってね?」
『あ、ほんとだ、電話なってる。ちょっと待ってて〜』
「んー」
プルルル…プル…ガチャ
『もしもし?』
私が手に受話器を持つと、
「あ、もしもし、翼?」
兄貴の声がきこえてきた。
『うん。どしたの?』
私が返事をすると、
「いや実はさ、こっちでの仕事が忙しくて忙しくて…1、2年帰れそうにねぇわ。」
『そう。んで?』
「(軽いな)だから、俺、お前一人じゃ心配なわけよ。」
「ということで、俺が帰ってくるまで鉄朗くんか研磨くん、どっちかの家に居候させてもらって。」
『えー…あの二人のどっちかの家に住ませてもらわなきゃダメなの?絶対に?』
「ああ。絶対、だ」
『えー…わかったよ…』
普通、この場合、他の人なら悩むところだと思うが、私はそうではない。
だって…
『クロ、兄貴が帰ってくるまで家に住ませて。』
家の庭に、条件を満たす者が居るから。
いちいち寝てる人を起こすのは悪いしな。
「エっナニコレどういう状況?」
『兄貴が海外行って1、2年帰ってこないんだって。私一人じゃ危ないから、その間、研磨かクロ、どっちかの家に住ませてもらえっていう状況』
「えー…やっぱりすげぇな椿くんは。」
「俺はイイヨ〜家汚いけどね」
『私が綺麗にしてやらぁ』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!