朝。
今日は玲於が何日も前から楽しみにしていた動物園
の日。
前日の夜も。
そんな約束をして眠った。だけど――。
朝早く、基のスマホが鳴る。
電話を切った基は、ものすごく分かりやすく肩を
落とした。
基はソファに倒れ込む。
ちょうどそのタイミングで玄関のチャイム。迎えに来た
マネージャーだった。
しょんぼりしたまま靴を履く。
玄関を出ても何度も振り返る。
マネージャーに背中を押されながら連れて行かれる
基を見送った。
そう笑った直後。二階から足音。
起きてきた。あなたは一瞬固まる。
その時。
思い出した。今日は横原が休みだった。急いで電話を
かける。数コールで出た。
スピーカーに切り替える。その瞬間。
ものすごい大きな声。
事情を説明する。
あなたはスマホを玲於に渡した。
玲於は嬉しそうにスマホを持つ。
少し沈黙。あなたはキッチンでお弁当を作り始める。
後ろから会話だけが聞こえる。
その一言で完全に勝負が決まった。
五分後。
玲於がニコニコでスマホを持ってキッチンまで走って
きた。
あなたは笑いながらスマホを受け取る。
電話を切る。その瞬間。
どこかへ走って行った。
数分後。
現れた玲於は横原とお揃いのパーカーを抱えていた。
一生懸命着替える玲於。その姿が可愛くて思わず笑う。
しばらくしてインターホン。
玄関を開ける
玲於を見た瞬間笑った。
梛沙も両手を伸ばす。
車に乗り込み出発。道中。
梛沙も。
動物園に到着。玲於は横原としっかり手を繋ぐ。
最初はゾウ。キリン。ライオン。ふれあい広場。
モルモットを抱っこする玲於。
梛沙もウサギを見て。
昼。レジャーシートを広げる。
梛沙も小さなおにぎりをもぐもぐ。
玲於も嬉しそうに食べる。
午後もたくさん歩いて。たくさん笑って。たくさん
写真を撮った。帰りの車。五分もしないうちに。
夢の中。梛沙も。
すやすや。静かな車内。
横原の家に到着。
車を降りる前に子どもたちを見つめて笑う。
二人で笑う。眠っている玲於は夢の中でも小さく
呟いた。
その寝言に横原は思わず笑ってしまう。
あなたも優しく微笑んだ。今日は少し予定とは違った
けれど。玲於も、梛沙も、そして横原も。みんなが笑顔
になれた、大切な動物園の一日になった。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。