塀の陰に隠れた私は、敵が居ないか周りを確認する。
あなた 「デクくん、大丈夫…!?」
デクくんは、胸に刺さった矢を取る。
それとともに血も滴る。
ロディ 「待ってろ、すぐに薬を調達して…。」
緑谷 「き、傷は…そんなに深くない…。」
デクくんは、胸ポケットから粉々になったスマホを取り出す。
携帯電話が矢の威力を半減していた。
私達が話している間にデクくんと一緒に居た少年が、デクくんを応急処置する。
あなた 「ごめん……水壁で矢を止めようと思ったけど…無理だった。」
緑谷 「大丈夫だよ…あなたちゃんのサポートが無かったら、絶対にもっと酷い傷を負ってたよ。…ありがとう。」
そう言って、微笑むデクくん。
私はこの笑顔に、小さい時から救われてた。
デクくんの応急処置が終わると、私達はそこから
離れた場所に洞窟を見つけた。
一晩はそこに身を隠す事にした。
𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄 𓐄
私は洞窟の外に出て、夜空を見上げる。
今にも星が降ってきそうな圧巻の夜空をただ眺める。
洞窟の中では、デクくんと少年が話している。
少年の声が近づいてきた。
後ろを向くと、少年は入り口付近の岩に腰を下ろしていた。
私は空を見るのを辞め、洞窟の中に入った。
ロディ 「俺は先の事なんか、なんも考えられねえ。パイロットになりたいなんて寝言、言ってる余裕もねえ。」
あなた 「………なんで?」
少年とデクくんが、私を見る。
あなた 「あ…ごめんなさい…突然口挟んじゃって……つい。」
少年は、私を見たあと再び口を開いた。
ロディ 「幼い弟妹を養うだけで、いっぱいいっぱいだ。」
あなた 「っ!!」
緑谷 「ぼ、僕は……」
何か話そうとするデクくんに、少年は声を荒らげる。
ロディ 「何も言うなよ!同情なんかされたくねぇ!」
ロディ 「両親なくして周りからも避けられてさ…ッ!あんたらには分かんねぇだろ!?俺の気持ち!!」
あなた 「分かるよ。」
ロディ 「………え?」
緑谷 「あなたちゃん……。」
無意識に私はそう言っていた。
あなた 「………分かるよ。」
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!