いつもはおとなしいなつが座っている俺の頭を優しく抱きしめた
頭が真っ白になって抵抗すら出来んくて
今までずっと我慢して来たんです
あなたさんのためにどうして壱馬さんが苦しまなければならないんですか?
あなたさんには彼氏さんがいるんでしょう?
抑えていた思いが溢れて溢れて
私が私じゃないみたいに
ちょっとくらい夢見させてください。
2人しかいない部屋に響いたリップ音
青白い蛍光灯の光が愛しい壱馬さんを照らす
壱馬さん。
早く私のものになればいいのに
、
目の前にいたなつを突き飛ばしてしまった
キス…
このままやと怒りでどうにかなりそうで
カバンを掴んで乱暴に部屋を出て行った
違う
違う
壱馬と呼ぶ声も
笑ったときの笑顔も
キスやって…
あなたならなんでも特別で
代わりなんて誰にもなれないし
なってもほしくない
俺はあなたが全てなんやって
部屋に1人残されて
1人泣いた。
私の恋ははかなく散った
壱馬さん…あなたは私の全てでした
机に大事なものお忘れですよ壱馬さん
あなたさんからのお手紙…
いつのものなのかはわかりませんが、きっと宝物なんでしょうね
そっと壱馬さんのいつもお座りになる席に置いておいた
私が好きなのはきっと一途なあなたなんでしょう。
だから、壱馬さん。
その恋叶えてくださいね
カメラに収められているなんて知らず
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!