僕は、隣の席に当たり前のように座る死神を一瞥して言った。
朝っぱらからこれだ。
僕は既に、諦めの境地にいる。
僕は思わず、彼女の姿に苦笑した。
死神と人間界の制服なんて、不釣り合いにも程がある。
僕は、窓の外に視線を向け、大きく息を吐き出した。
こんなうるさいお隣さんだなんて………。
それに、なんなんだ?
このクラスの馴染みようは。
まるで、人気者じゃないか。
彼女は、机の周りに集まっている沢山のクラスメイト(陽キャ)に囲まれているのだ。
もちろん、男子も女子も関係なく。
どうせ、記憶を書き換えるとか何とか言ってたから、調子に乗って、自分の都合のいいように書き換えたんだろう。
_______私情を持ち込みすぎだ。
陰キャの僕は、彼女にすごく話し掛けづらい。
聞きたいことはいくらでもあるってのに。
担任の先生が、チャイムと同時に教室に入ってきた。
彼女の周りに集まっていた生徒が、それぞれの席へと戻っていく。
彼女は、そう言い国語の教科書を出した。
彼女は、文句を言いつつ、のろのろと教科書を引き出しに仕舞った。
マイペース過ぎる。
こっちがヒヤヒヤするよ。
先生が笑いながら言った。
誰のことだか、分からなかった。
僕は、クラスメイトの苗字ですら、全員覚えてないのだから、そんな人いたっけなんて思っていた。
しかし、明らかに先生の視線が僕の方に向いている。
僕は榊原だ。
それに、HR中に教科書を出すなんて馬鹿じゃない。
まず、そんな奴がクラスにいたか?
僕がそう思ったのも一瞬だけ。
__________いた。
さっきまで会話をしていた隣のヤツが。
どっと笑いが起き、そこらじゅうから野次がとぶ。
どうやら、彼女の名前は栗栖紗奈らしい。
そしてクラスメイトからは”さなっち”なんていう愛称で呼ばれているみたいだ。
僕は彼女の名前を聞いていなかったことに気づき、1人納得した。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。