授業中、僕は視界の端で何かがキラリと光ったのを射止めて横を向いた。
僕がギョッとして彼女をみると、彼女は日光にビー玉みたいなものを透かしながらゆっくりと答えた。
ヒソヒソと話していると、先生に気づかれクラス中の視線が僕達に集まってしまった。
彼女といるとろくなことがない。
僕は色々と気になることはあったけど、渋々ノートに目を落とした。
****
待ちに待った昼休み。
質問が山積みだ。
全部答えてもらうぞ!
彼女は、僕の言葉を遮り、大声をあげた。
しかし、僕の名前をいきなり呼び捨てにするなんて聞き捨てならない。
学ランの袖を引っ張られ、僕は我に返る。
僕が答えると、彼女はポケットから例のビー玉を取り出し空を透かした。
彼女は意外にも、ロマンチストなのかもしれない。
僕はそんなことを思いながら、
と聞く。
すると彼女は、ビー玉を空に透かすのを辞め、
と言った。
僕は"忘れ珠"というものに興味が湧いて、彼女に問いかけた。
沈黙の後、彼女は首を傾げ、
と言い放った。
彼女はけろりとして頷いた。
そして、
と続けた。
はっきり言って意味がわからない。
仮に、"忘れ珠"が物忘れを激しくする珠だというのなら、それを使って一体何のメリットがあるんだ。
そんでもって誰が使うんだ、そんなゴミ。
僕はそう言い、お弁当の卵焼きを口に入れた。
"忘れ珠"か……。
なんだか気になるな。
僕と彼女が、やっと大人しく昼ごはんを食べ始めたその時________________
ギギィ
屋上の扉が開き、誰かが入ってくる音がした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。