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第8話

異色
950
2020/05/24 06:37
久遠涼
久遠涼
ふぁ〜……寝みぃ。
おっ!お前ら早速くっついたわけ?
栗栖紗奈
栗栖紗奈
は?
榊原唯人
榊原唯人
は?
 屋上の扉を開けやってきたのは、同じクラスの久遠涼くおんりょう
 彼女側の人間で、いわゆる陽キャ。
男子にも女子にも人気が高い。
 あんまり関わりたくない人間だ。
栗栖紗奈
栗栖紗奈
唯人とは適切な距離を開けているわ。くっついてはいないわね
 そう言って、彼女は更に僕から離れていく。
 ────────そういう距離の問題?
久遠涼
久遠涼
くくくっ。
相変わらずおもしれーやつだな
 彼女の言葉を不審がる様子もなく、久遠涼はケラケラと笑った。
 一体どこが面白いんだ。
久遠涼
久遠涼
それにしても、紗奈と榊原とはこれまた異色のコラボだな
 ──────異色のコラボって何。
 僕は、ノーコメントで久遠涼をジトっと見つめる。
久遠涼
久遠涼
お前の弁当うまそー!
いただきっ
榊原唯人
榊原唯人
あっ
 僕の後ろに回り込んだ久遠涼は、素早くウインナーを奪っていく。
久遠涼
久遠涼
うん。まあまあ!
 人の弁当の具材を勝手に盗んでおいて、まあまあって……。
図々しいやつだな。
久遠涼
久遠涼
ってか、もう昼休み終わるし!
またなー
 そう言って、久遠涼はスキップをしながら屋上から出ていく。
榊原唯人
榊原唯人
え、何しに来たの……
 僕は思わず、彼が去っていった屋上の扉を見つめ呟く。
 第一印象。
図々しくて、嵐みたいなやつ。
うん、完璧。
栗栖紗奈
栗栖紗奈
さてと、私たちも教室に行きましょうか
榊原唯人
榊原唯人
そうだね
 スカートについた汚れを払いながら、彼女が立ち上がる。
 僕と久遠涼の間には壁があるから、もう関わることはないだろう。
****
 そう思っていた────────。
昨日までは。
久遠涼
久遠涼
なぁなぁ、トイレ一緒に行こうぜ
榊原唯人
榊原唯人
…………
久遠涼
久遠涼
ねぇってば。漏れる〜
 ───────やたら、みんなでトイレに行こうとする女子か。
 次の授業に向けて、教科書の準備をする僕の周りで何故か久遠涼がうろちょろしてくる。
いい加減、諦めて欲しい。
榊原唯人
榊原唯人
勝手に行けばいいじゃん
 なかなかトイレにいかない久遠涼に、痺れを切らして言うと、
久遠涼
久遠涼
だって、一緒に行った方が楽しいだろ!
榊原唯人
榊原唯人
何が
久遠涼
久遠涼
………さぁ?
 うん。
一生こいつの思考は理解できない。
知ってたけど。
久遠涼
久遠涼
もういいよ!榊原のバカ!
 かと思えば、別れを切り出されて情緒不安定になった彼女みたいなことを残して、教室から出ていく。
栗栖紗奈
栗栖紗奈
……久遠涼って、良い奴よね
 僕の隣で、彼女が感心したように言う。
 神様、どうか僕の平和な学校生活を返してください……。

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