屋上の扉を開けやってきたのは、同じクラスの久遠涼。
彼女側の人間で、いわゆる陽キャ。
男子にも女子にも人気が高い。
あんまり関わりたくない人間だ。
そう言って、彼女は更に僕から離れていく。
────────そういう距離の問題?
彼女の言葉を不審がる様子もなく、久遠涼はケラケラと笑った。
一体どこが面白いんだ。
──────異色のコラボって何。
僕は、ノーコメントで久遠涼をジトっと見つめる。
僕の後ろに回り込んだ久遠涼は、素早くウインナーを奪っていく。
人の弁当の具材を勝手に盗んでおいて、まあまあって……。
図々しいやつだな。
そう言って、久遠涼はスキップをしながら屋上から出ていく。
僕は思わず、彼が去っていった屋上の扉を見つめ呟く。
第一印象。
図々しくて、嵐みたいなやつ。
うん、完璧。
スカートについた汚れを払いながら、彼女が立ち上がる。
僕と久遠涼の間には壁があるから、もう関わることはないだろう。
****
そう思っていた────────。
昨日までは。
───────やたら、みんなでトイレに行こうとする女子か。
次の授業に向けて、教科書の準備をする僕の周りで何故か久遠涼がうろちょろしてくる。
いい加減、諦めて欲しい。
なかなかトイレにいかない久遠涼に、痺れを切らして言うと、
うん。
一生こいつの思考は理解できない。
知ってたけど。
かと思えば、別れを切り出されて情緒不安定になった彼女みたいなことを残して、教室から出ていく。
僕の隣で、彼女が感心したように言う。
神様、どうか僕の平和な学校生活を返してください……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。