第2話

自称死神
2,650
2020/02/16 06:22
「ちょっと、待って!!」




「____………!?」



いきなり、背後から聞こえてきた叫びに、思わず柵を掴んでしまった。
せっかく死ぬ予定だったのに…。
邪魔するのは先生?_____などと呑気に振り向いた僕がいけなかった。



「だ、誰?きみ……」



危うく、屋上から転落しそうになる。
まぁ、転落はしたいのだけれど、とにかく事故みたいな死は嫌なのだ。




「私のことは置いといてっ!…全く、勝手に死のうとするなんて有り得ない。予定と全然違うじゃないっ!?ここ最近、こういう人間が増えてるから、私が落第扱いされるってのよ。もうっ、分かる?」




突然背後に現れた女の子は、マシンガンのように、僕に説教じみたことを言ってきた。
しかし、大半がよく分からない内容だ。
彼女は一体何の話をしているんだ?
まず、彼女は何者なんだ?



「……自殺希望者、ではないわよね?」



彼女は遠慮なく、僕に問いかけた。



「え、えっと…まぁ、はい…」



「はぁ?!嘘つくんじゃないわよっ。こっちはね、自殺希望者なんかじゃないのは分かってるのよ」



彼女は、犯人に自白させようとする刑事みたいなことを言った。
かと思えば、『…そうよね、自殺希望者なら私、ちゃんと届け出すもの。だから、悪いのはアイツよね』なんて呟いている。



僕はとりあえず柵を乗り越え、死ぬのは彼女がいなくなってからにすると決めた。



「…あの、さっきから、きみの言っていることがよく分からないんだけど。まず、きみが誰なのか教えてくれると、とても有難い」



僕は、ずっと気になっていたことをようやく聞く事が出来た。
話はこれを聞いてからだ。



「あー………私?私は、死神よ」



「………………………へ?」



思考が止まる。
この人は何を言っているんだろう。
そんな、昨日の夕飯のメニューを教えるようにすんなり言われても困る。



「通りすがりの死神、とでも言っておこうかしら……なーんて!」



全く面白くない。



「あ、そういえば人間に正体を明かしたらいけないんだった!ちょっと聞かなかったことにしてくれる?」



今更どうしろと……?
僕は呆れて、無言で彼女を見つめた。

「ま、そういうことだから」



_________どういうことだ。
全然理解が追いつかない。
しかし彼女はそんな僕に気づきもしない。



「あのさ、きみ本気で言ってる?制服着てないし、この学校の生徒ではないことは確かだよね。だとしたら、れっきとした不法侵入だよ」



「もちろん本気だけど。不法侵入?死神なんだから、そんなこと関係ないし」



彼女は、死神だということをもう一度言った。
僕は、面倒臭いことになってきたと、憎らしいくらいに真っ青な空を仰いだ。













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