無理矢理笑顔を作って
挨拶だけはしよう
私は
逃げるように武蔵神社を後にした
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武蔵神社から離れた
少し広い公園に来た
誰も居ないのが好都合だ
ブランコに乗り、俯き
静かに泣いていた。
その時だった
ザッ…ザッ…
足音が鳴ってることにも
その足音が近づいてきていることにも気づかず
私はそのまま泣いていた
俯いていた私の視界には
東卍の特攻服らしきブーツなどが見えた
しかもどんどん私の近くに迫ってる
無言で近づいてくるとか、趣味悪いな……
笑いたきゃ笑えばいいじゃない。
そう思い、バッっと顔を上げる
そこには
綺麗なバサバサのまつ毛
黒マスクをつけ、長い髪を下ろしている
三途春千夜の姿があった
どうして黙ってるの?
春千夜はマイキーの方にいなよ
なんで私をつけてくるのよ、
突然口を開く春千夜
私はここでも責められなきゃいけないの?
もうやめてよ…
そう言って春千夜は
私の目にたまっていた涙を拭き取る
なんで…なんでそんなに私を信じれるのよ…
優しい
優しすぎるよ春千夜…
こんなに泣いてるのに
服も濡れるってのに
どうしてそんなにやさしく抱きしめてくれるの
ばかみたいにお人好しだな…
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。