病室に案内してもらうと、ドアの所に「重岡大毅」って名前のプレートがあって、
ああ、しげ、ほんまに病気なんやって、今さらながらに思う自分がいた。
部屋に入ると、しげのお母さんがびっくりしてた。
順に名前を呼び、最後に僕を見ながら、「う~んとね・・」と申し訳なさそうに苦笑してはる。
そう言って頭を下げると、
しげがきゃはきゃは笑った。
お母さんに怒られて、しげはてへっと舌を出してる。
しげの頭を撫でて、僕らに頭を下げて部屋を出ていくお母さん。
しげは頭を撫でられた時、「やめてやぁ」って言うんでもなく、ふふっと嬉しそうに笑ってた。
その光景を見たとき、ただそれだけなんやけど、
きっと、すごくいい家族なんやなって思った。
ベッドの周りに椅子を持ってきてみんなで座ると同時に、濱ちゃんが封筒を指さした。
しげが封筒をビリビリやぶって中身を出すと、中からディスクと1枚の紙。
しげは不思議そうにその紙に書かれている文章を読んで、だんだんと表情を変えていった。
しげは慌てたように望の腕をぎゅっと掴んで、手紙を読ませる。
望の顔も、しげと同じようにみるみる変わってって、最終的に二人で目を見開いて顔合わせてて。
濱ちゃんと食い気味に尋ねると、二人は僕らを見て、
そう声をそろえた。
そう言いあってる二人を見て、濱ちゃんと顔を合わせた。
濱ちゃんも、笑ってた。
これからも、一緒に頑張ってこうな?
はしゃぐ二人に、心の中でそう呟いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!