第50話

4,600
2020/07/26 03:00
悲しみは
連鎖する
新たな悲劇が
始まった
幸せが壊れる時は
いつも
血の匂いがするのに
今日の俺は
それに
気がついていなかった
知らなかった
どうしてこの世界は
優しい人ばかりが
苦しめられるのだろう
竈門炭治郎
竈門炭治郎
…それ、いつだ…?
ようやくこぼれ出た
その声は
とても
か細かった
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
…2時間くらい、前
俺は
その言葉に
跳ねるように
顔をあげた
だってその頃に
ここでは
禰豆子の目が
覚めたのだ
偶然にしては
あまりにも
出来すぎている
そのあとに続けられた言葉に
俺は
そう思った
栗花落カナヲ
栗花落カナヲ
あなたの状態が禰豆子とすごく酷似してる
まるで、禰豆子の怪我を
引き継いだように
外傷はない
そう考えるのが
一番自然だった
竈門炭治郎
竈門炭治郎
…っ…
ガタッ
ドアを開け、俺は治療室へと駆け出す
あなた
あなた
あなた、起きてくれ
どうか神様
俺からこれ以上
大切な人を、何かを
奪おうとしないで
お願いします
駆け込んだ治療室には
誰もいない
俺は踵を返して
今度は入院部屋へと向かった

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