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2019/07/17

第3話

「白石麻衣×保育士」ep.3
 「りくくん、久しぶりだね。」
当たり障りない言葉を投げかける。すると彼は手にしていたお菓子を私にくれた。
「ありがとう。これどうしたの?」「パパが渡してって。」遅れて、彼の父親が話しかけた。「実は嫁が亡くなってしまいまして…。長い間お休みをもらって申し訳ございません。園長さんには伝えたのですが…。」

予想外だった。確かに彼の送り迎えはいつも父がしていた。後に分かったことだが、彼の母は彼を産んだ2年後、病に侵されずっと入院していたそうだ。それからは彼はまともに人に心を開くことが出来ず、保育園に来てもずっとお絵
描きをしていたという。後日、彼が描いた絵を見てみると母親らしき人と遊ぶ様子や一緒に歌を歌ったりしている様子が描かれていた。その中で気になる絵が1枚ある。女の子がスカートを履いて、マイクを持って歌を歌ってる絵だ。
母親かと思ったが、今までの絵とタッチが違い、紙の周りが黒く塗りつぶされていた。よく考えてみると、この黒い部分はテレビの縁で、テレビの中の人を描いてると予想した。そして、エプロンのポケットから、彼からもらったマイクの絵を見直す。もしかして、私はこの絵の女の子と似てるからマイクの絵をプレゼントしてくれたのか?とおごがましい考えに辿り着いた。さすがにそんな都合のいい話はないかと、これ以上分析するのをやめた。


思いがけない再会から2日後、りくくんが姿を表した。「おはようございます。今日からまたよろしくお願いします。」律儀にお辞儀をした彼の父は子どもを預け、颯爽と去っていった。
「おはよう、りくくん。今日もお絵描きする?」一緒に遊ぼうと思い、画用紙とクレヨンを手にして待っていた。しかし、彼は首を横に振り、私の腕を引っ張って体育館へと走った。
「りくくん、待って!」引っ張られるまま走ると、彼は立ち止まり、今流行りのアイドルの曲を歌い始めた。驚いて思わず「すごい!」と大きな声を発してしまった。彼は私の声にびっくりして、歌うのをやめてしまった。「ごめんね。急に大きな声を出してしまって。」彼は私をじっと見つめて「踊って。」と発言した。
一瞬戸惑ったが、彼が歌った部分を口ずさみながら踊った。すると、彼は満面の笑みで私の振りを真似しながら一緒に歌ってくれた。やっぱり可愛いし、無邪気な彼が好きで癒やされた。
踊り終えると、彼は拍手をしてくれた。
「先生、アイドルになってほしいな。」
返す言葉が見つからない。「先生には無理だよ。」と否定すると悲しい顔するだろうし、「わかった。なってみる。」と肯定すると適当に言葉を返してしまった気がしてならない。
「先生はりくくんと遊びたいから先生になったんだよ。アイドルになってしまったら一緒に歌ったり踊ったりすることが出来なくなるからこのままがいいかな。」うまく言葉を返せた。
しかし、心中はモヤモヤしたままだった。