第10話

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2022/02/15 02:26
莉犬
ただいま……
おにーたん((こら
おにーたん((こら
おかえり莉犬
莉犬
お兄ちゃん……
俺は、お兄ちゃんが嫌いだ。


暴力を奮ってくるから。

親の前では優しいお兄ちゃんを演じる。


俺に暴力をふるおうとする親を止めたり、俺を守ってくれたりする。


でも、それはそのせいで俺が死んだら困るから。



お兄ちゃんのストレス発散用具である俺が死んだら困るから。
おにーたん((こら
おにーたん((こら
手洗ったら俺の部屋来いよ。
今日は母さんも父さんもいないんだ。
莉犬
…はい……
暴力を振るわれるだろう。怖かった。

でも行かなきゃ殺される。殺されるよりマシだ。

俺はお兄ちゃんの道具なんだから。約束は守らなきゃ……。


なんでこんなくだらないこと考えてるんだろうって、思うけど。
おにーたん((こら
おにーたん((こら
お、来たな。じゃ、そこ立てよ。
莉犬
はい……
おにーたん((こら
おにーたん((こら
オラッ!ドンッドンッ
莉犬
っ……!
でも、痛みは感じられなかった。

前からずっと感じられない。

痛いと思えなかった。

殴られたことより、道具として使われたことに傷ついた方が大きかった。
おにーたん((こら
おにーたん((こら
オラッ!ドンッ死ねよっ!消えろっ!ドンッ
莉犬
……。
学校のことに、友達のことに不満を抱えているお兄ちゃんのストレス発散用具が、なんで俺なんだろう。


もう、疲れたよ、俺。
おにーたん((こら
おにーたん((こら
はぁ……。もういい、部屋もどれ。
莉犬
はい……。
疲れた。面倒くさくなった。


俺はその日の夜、家を出て散歩に行った。

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