第8話

どうしてこうなった
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2020/04/26 14:20
陣川は朝目覚めたと同時に、どことも知れないベッドに寝ていたことに気がついた。

隣をふと見ると________

「ソ、ソン君⁉︎」

「あ、おはようございます。今日非番でよかったですね、陣川さん。僕もですけど」

なにがなんやらわからない、どうして自分は神戸の家のベッドで寝ているのか。


「陣川さん」

「え、な、何?」

「あなたが寝ていたからここにいるんですよ」

「そうなの?」

「ええ」

いまだ状況が飲み込めていなさそうだったが、すぐに昨夜のことをおもいだしたのか、

「ご、ごめんソン君!そんなことさせるつもりなかったんだけど……ぼく、重かったでしょ?」

「いえ大丈夫です」

なぜかベッドの上で向かい合って正座というなんとも奇妙な形になった。

しばらくの間、沈黙が流れる。

「……質問があります」

「え?ぼくに?」

「はいあなたに。……男の人があなたのこと好きだって言ったらどうします?」

そして度重なる沈黙。陣川はぽけーっと、なにも考えてなさそうな顔をした。

「いや、別になんとも……」

「はいって言います?」

「相手によるけど……」

神戸はだんだんイライラしてきた。なんという察しの悪さ。鈍い。鈍感。これは杉下並みである。

「……月が綺麗ですね」

「ソン君、今朝だよ?」

まさかこれも知らないとは。だから彼女も出来ないんだよ。神戸は脳内で散々目の前の男を貶していた。

伝わらない、だけど、伝わらないで終わらせたくない。

神戸は、やけになって陣川に抱きついた。

「ソ、ソン君⁉︎」

どうすることもできずに、ただ両手を宙に浮かす。胸の鼓動が速くなる。

「……察しわるいよ、陣川さん」

「どうしたのいきなり……?」

陣川の鈍感っぷりに、我慢の限界がきた。

「だから!」

「俺、陣川さんのこと、好きなんです!恋愛的な意味で!」

神戸は思った。

あれ?何言ってるんだろう、俺。

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