第5話

いやはや本当にいるとは
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2020/04/24 13:34
3人はある和風屋敷の前で立ち止まっていた。

これこそ、陣川が最近知り合った女性が所有している屋敷らしい。

「うわぁ緊張するなぁ」

陣川は何故か緊張しだした。その隣で神戸はただひたすらに反応しないように努めるのだった。

「行きますか」

杉下が号令をかけると、そうですね、と2人も動き出した。


引き戸を引くと、木の匂いが漂う。
すると陣川が、

「森の中みたいですね!」

と言った。
彼は森がなんたるかを知らないのだろうか。わけのわからない表現をして3人の1番後ろを陣取った。


丁度、5つ目の部屋の庄司をあけた時だった。

「わっ⁉︎」

陣川が叫んだ。

声に伴って2人が後ろを向くと、なんとも奇妙な状況となっていた。


1人の男が、陣川の頭に銃を突きつけ、人質を取る形になっている。

どうやら空き巣犯は、本当にいたようだ。

「お前ら、何してる!」

男が乱暴に尋ねた。

「な、なにか不審なことをしたらなぁ、この男を撃つぞ!」

さすがの杉下や神戸も、陣川と言えど人質を取られてしまったら動けない。

「違います!ぼくらは強盗がいないか確かめに来ただけで……」

モロ言いやがったコイツ!

という神戸の心中のツッコミは華麗にスルーされ、杉下が男に話しかけた。

「人質をはなしなさい。我々は警察ですよ」

「クソッ……」

カチャリとホルダーを回す。男の顔に冷や汗が流れる。

陣川の首に回していた腕に力を入れるとと、喉が閉まりそうになった陣川が声にならない嗚咽をあげた。

と、その時である。

「警察だぁっ!」

玄関の方から聞き覚えのある声がした。

男が動揺し警戒を緩めた隙を狙い、神戸が溝落ちに蹴りと拳を入れた。

「お見事ですねぇ神戸くん」

空き巣犯の縛りから、やっとのことで解放された陣川は、喉を抑えて激しく咳をした。

男が逃げ出そうとするのを、やって来た伊丹や芹沢、三浦が抑えこんだ。

「お前、一週間前にあった強盗殺人の重要参考人だよなぁ?どうしてウチの陣川人質に取って銃なんて持ってんだえぇ?」

伊丹に責められ何もいえなくなったところを、三浦が時刻を読み上げ現行犯逮捕
した。

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