いた、神崎さん。
俺は神崎さんの隣に座り、彼女をちらりと見た。
長い髪は、無造作に所々跳ねているけど、丁寧に手入れされてるのが分かるくらい髪質はつやつやだ。
無表情に本に目を落とす姿は、まさに一匹狼って感じがする。
俺に軽く、「作ちゃんもおはー!」と話しかけ、神崎さんの前の席に座った。
神崎さんが、ノートを取り出してなにか書きつける。
それを見てまたガリさんが本の感想を語り出す。
それを見て、頷きながら微笑してる2人は、本当に絵になる。
いつもの教室の光景が、なんでこんなに羨ましく見えるんだろうな。
俺がそう話に入っていくと、神崎さんの顔が少し強ばったように見えた。
そして俯く直前、悲痛に顔が歪んで.....
そう言えば、神崎さんって誰に話しかけられてもガリさんとしか話さなかったっけ.....
神崎さんは何かを書いて、千切ったページを俺の机へ。
そして本を持って出ていった。
外見に似合わぬ可愛い丸文字。
一瞬浮かんだ悲痛な顔の歪み。
俺はどうしても放っておけなくて、2人を追いかけた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。