第13話

2.騒がしい入学式-6
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2018/09/19 03:09
そしてその日の夜、お風呂上がりに今日のことを思い出しながら部屋にもどった。
部屋には、学校から帰ってから作った星形のアイシングクッキーとホットミルクを寝る前に食べようと思い、持ちこんだ。
うまくできたアイシングクッキーをほお張りながら、大きなため息をつく。
城崎 杏
城崎 杏
とんでもない一日だったな……
モグモグと食べながら、壁にかけている制服を見る。
何度見てもかわいらしいデザインに、落ちていた心はようやくいつもの気持ちを取りもどしつつある。
その制服を手にして自分の体にあわせ、全身が映る鏡の自分を見た。
城崎 杏
城崎 杏
やっぱりここの制服、かわいいな
気分転換にくるんとその場でターンをしようとしたけれどバランスをくずしてしまい、半分だけ回ってその場に立ち止まってしまった。

すると、おとといまでなかったものがそこに現れて、私は笑顔のままその場に立ちつくす。
窓の外を見ると、小さな星つぶがかがやく夜空が視界のはしに見える。
でも、となりの家の一室では、蛍光灯の明かりの下には窓際に勉強机をおいて、そこで今まで勉強していたんだろう。
彼の持つシャーペンは今は動きを止めていた。
そして目と目が合った瞬間、私の笑顔は一瞬でくずれて、まるで妖怪を見てしまったような表情になった。
城崎 杏
城崎 杏
な、な、なんで……!
開いた窓の奥から変なものを見るような目で私を見るのは、苦手なとなりに住んでいる人。
しかも、兄の涼真の方!
ここの住宅街はとなりの家との距離はかなり近い。
だから、私の部屋と向かい合わせになっている涼真の部屋からは、私の姿は丸見えになっていた。
相良 涼真
相良 涼真
アンタこそ……、一人でなにやってんだ?
肩をふるわせ、笑いをこらえている涼真。
ベランダ越しに見えるその姿は、おかしくてたまらないって感じ。
多分……いや、きっと一部始終、カーテンを開けっぱなしにしていた私の今の行動を見られていたんだ!
城崎 杏
城崎 杏
ち、ちが……。コレ、学校の制服……! サ、サイズがいまいちだったからもう一度あわせてただけで!
相良 涼真
相良 涼真
サイズ合わせでアンタは踊るのかよ。しかもターン、失敗してるし
ガマンできなくなったのか、涼真は「ぶはっ」と小さな声をもらし、口を手でふさぎ、とうとう笑い出してしまった。

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