自分の体に合わせていた制服を乱暴にベッドの上にほうり投げた。
心の中は(シワになっちゃう!)と悲しい気持ちもあるけど、浮かれている自分を見られた恥ずかしい気持ちで今はいっぱいいっぱいなんだ。
そんな変な格好をしていたっけ? と、涼真の言葉の意味がわからず、首をかたむける。
すると、涼真は笑っていた表情を消し、気のせいじゃなければほほを赤くそめて視線を泳がせた。
涼真に姿見を指さされ、私は反転して自分の姿を見た。
そこにはあわいピンク色のうすいキャミソール一枚と、パイル生地で白色のショートパンツ姿の自分が映っている。
こんな薄着の姿を涼真に見せていたんだ! と気付くと、
と女らしくない声を出して、その場に勢いよくしゃがんでしまった。
怒りがどんどんと込みあがってきて、体もプルプルと震えてきた。
どうせならベランダに出て思いっきり言い返してやりたい。
でも、今の私のこの姿じゃ立ち上がることさえできず、だからといってもう夜の十時を回っているというのに、これ以上大きな声を出すことは近所迷惑になるから絶対に無理だ。
きつくにらむ私を、涼真は勉強机のイスに足を組んで座りながら見くだすように見つめてくる。
このきれいな顔でそんな姿を見せられると、とてもサマになり、絵になるのがくやしい。
だけど、みとれてしまいそうになる。
……本当に腹が立つー!
そんな時だった。
無言でにらみあっていた私たちの間に、コンコンッと扉がノックされる音がする。
お互いに見つめ合ったまま瞳が大きく見開く私たち。
その音は、どうやら涼真の部屋からだったみたい。
声の主は弟の隼介だった!
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。