今日も昨日に負けないくらい春の日差しがポカポカと心地よい気持ちのよい朝。
とうとう私も高校一年生だ。
今日から通う高校は、親友の真美に、
とさそわれて受験した高校。
たしかにかわいいものに苦手意識があった私でも、ここの制服は一目で気に入るくらいかわいいデザインだ。
上質のベージュ色のブレザーは黒色で縁取られていて、制服とは思えないくらいかわいい。
スカートはグレーと白のチェックの少しミニ丈のもの。
大きくて真っ赤なリボンが、女子の制服で一番のポイントだ。
そんなかわいい制服が意外と自分ににあっていて、ニヤニヤしながら鏡を何度も見てしまう。
その声を聞き、朝食を食べ、もう一度玄関にある鏡でチェックした後、私は大きな声で両親に声をかけた。
今日は入学式だから、両親もあとから来る予定。
せっかくのかわいらしい制服なんだもの。
親友の真美と一緒に高校の正門でたくさん写真を撮ってもらおう。
きっと、私の数少ないかわいらしい服を着た貴重な写真になるはず。
そんな考えに浮かれながら家を出ると、門を出てすぐとなりから鼓膜をやぶくくらいの男の子の大きい声が早朝の住宅街にひびいた。
ビクッ! と上がる私の肩。
おそるおそる声の主の方を向くと、予想通りの人物がそこに立っていた。
私の姿を見つけ、満面の笑みで名を呼ぶ隼介と、重いため息をはく兄の涼真が相良家の玄関から出てきた。
しかも二人は、私が通う高校の男子の制服とそっくりな服を着ている。
一瞬にして嫌な予感がした。
隼介の大きな声は涼真が制服のえりを引っ張ると苦しそうな声に変わる。
そしてズルズルと私の目の前を弟を引きずって通り過ぎていく涼真と、引きずられても笑顔を絶やさない隼介。
私の前を通って行った涼真が振り返って私に声をかける。
おどろいてかたまっていた私は、そこでハッと意識が戻った。
学校が同じだから、私は自然と相良兄弟に合流する形で初めて通う高校の通学路を歩き始めた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。