第9話

2.騒がしい入学式-2
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2018/09/12 02:49
新しい制服を着て、本当なら浮かれた気持ちで見なれた住宅街を一つ大人になった気分で歩くはずだったのに。
私にとってあこがれの高校への第一歩という道なのにそんな余韻にひたれることなく、あわただしい初登校を迎える。
駅のホームでも、満員電車の中でも、突然現れたテレビに出てくるアイドル並み……いや、それ以上なイケメンオーラを放つ二人の兄弟の存在感はすごかった。
それは通学する電車内だけでなく、高校に到着してからがもっと大変だった。

「うわっ! 誰あのイケメン二人! すっごくレベルが高いんだけど!」
「芸能人かなー? テレビカメラ来たりしちゃってる?」
「顔、結構似てるよね? 兄弟かな? それにしてもカッコいいー!」

うるさい……相良兄弟を取り巻く、特に女子たちの声がとにかくうるさかった。

正門をくぐると、私たち新入生は昇降口へと向かって入学式の受付をする決まりだ。
さっき電車の中で親は仕事で来られないと隼介が言っていたから、親代わりに涼真が受付を行っている。
多分、こうなるだろうとは思っていたけれど、兄弟そろってイケメンの二人は、主に女子を中心とした注目の的となっていた。
安崎 真美
安崎 真美
うわっ! 超絶イケメン発見! なにアレ! あんなスペック高い男子、この高校にいるの!? 杏、知ってた?
私のすぐとなりで大きな声を上げたのは、一緒に教室に向かおうと思い正門辺りで待っていた親友の真美だった。
真美は今日のためにうすい茶色の髪色のボブカットをきれいに整えている。
まゆも肌のスキンケアもリップまでもちゃんと手入れをする女子力が高い女の子だ。
そして、イケメンを見つけるのも高校生になってもおこたらないらしく、相良兄弟を見つけては早々にテンションが高くなっていた。
城崎 杏
城崎 杏
真美、声が大きい! しかも私にあいさつもナシにいきなりそれ?
安崎 真美
安崎 真美
だって、ほら! 周りの女子、先輩後輩関係なくみんな見てるよ! 周りの男子、ジャガイモにしか見えないね! 周りがジャガイモならあの二人は高級スウィートポテトだわ!
城崎 杏
城崎 杏
お菓子に喩えるのやめてよ。それにそんな大声出したら、聞こえちゃう……
安崎 真美
安崎 真美
あっ、笑顔の方がこっちに気付いた! ちょっと、こっちにめちゃ手を振って向かって来るんだけど!
真美があっちの方向を指さしながら、私の新品の制服の袖を引っぱる。
私は二人がいる方を向きたくなくてそっぽを向くけれど、それは隼介の大声のせいで逃げられなかった。
相良 隼介
相良 隼介
杏ちゃーん! 受付ここだよー!? おばさんは来た? あっ、あとで一緒にクラス名簿見に行こうね! くつ箱の前に張り出されてるんだって! 今、そこで聞いたー!
相良 涼真
相良 涼真
うるさい、バカ。入学早々、目立つことをするな
言い終わると同時に隼介が私と真美の前に着いて、そしてうしろからやってきた涼真のげんこつが頭にさくれつする。

涼真の言った言葉は私も心の中で大きく叫んでいたことだ。
涼真の言い分にはげしくうなずこうとしたら、その肩は真美の強力な手でつかまれ、ブンブンと振り回されてしまう。
安崎 真美
安崎 真美
えっ? なに? えっ? ど、どういうこと? 杏、知り合い……? あんた、中学の時からの親友の私にこんなイケメン兄弟の存在を隠していたの!?
相良 隼介
相良 隼介
杏ちゃんの親友? さっそくお友達が見つかったんだ、よかったね。俺、杏ちゃんの家のとなりに引っ越して来た相良 隼介。よろしくねー
相良 涼真
相良 涼真
なんだ、ツレがいたのか。じゃあ、俺はもういいな。隼介、あまり面倒をおこすなよ。アンタ、コイツのこと見てて。よろしく
城崎 杏
城崎 杏
はぁ!? ジョーダンでしょ! やだ、待ってよ!
涼真は私に隼介を押し付けると手をヒラヒラッと振り、あくびをしながら私たちの前から去って行った。
混乱状態の真美とうれしそうに笑顔をたやさない隼介が私をジッと見ている。
そんな私たちのやり取りが目立たないわけがなく、その場にいた生徒全員と保護者の注目の的となってしまい、入学式が始まるという緊張感を味わうよゆうもないまま、校内へと向かった……

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