これで戦闘ができる。だけど、それと共にこんな声も聞こえた
「生徒のかっちゃん!!かっちゃんはなるべく戦闘を避けて!」
かっちゃん...確か、出久くんが勝己くんの事をそう呼んでいた気がする
それもそうだけど、、敵達の狙いが勝己くんだと言うことが分かって、内心凄く怖いの..ッ
この林間学校期間からやり始めた技...
私は感情を悟られないように笑顔を浮かべた。
所謂、ポーカーフェイス
木の葉が揺れ、ざわざわと音を立てる
その音がスッと無くなった時..
これが、戦いの合図
前方に勢い良く、圧縮した風を放つ
そう言い、ブラッドは横に軽く飛び、私の風を避けた
ブラッドは流れ動作でこちらに走って来た
急いで伸ばした手を戻し、防御の体制に入る
ブラッドはスーツに隠し入れていたナイフを手に持つと、間合いに素早く潜り込み、ナイフを私の腹部に向けた
寸前で風を操り、ナイフを食い止めた
ブラッドは更に力強く踏み込み、ナイフを押し込んで来た
私も負けじと風で押し返す
しかし、やはり筋力の差というのはこういう所に良く出てくる..
また、ドクンと言う感覚が身体中に走った
身体の力が抜けていき、だんだんと立てなくなってくる
どうにか、かくつく足を立たせて相手の動きに視線をやる
確かにそうだった
我慢して立てばいい..けれど、それにも限界はあった
私は、ついに立つことができなくなり、その場に倒れてしまいそうになった
一瞬の隙を逃さぬよう、ブラッドもこちらに向かっていた
立てないなら..
風を勢い良く吹かせ、自分の身体を浮かせる
安定させるために、風で自分の身体を包み込む
こうして飛んでいれば、ブラッドに触れられる可能性も低い
一石二鳥だ
だけど、憶測はあくまでも憶測だったようで...
個性を使う体力すらまともに確保できず、空中に投げ出される身体
視界はまだ微かに見えていた
だけど、焦点が合わなかった
それでも、声ははっきりと聞き取れた
自分に必死に訴えかけ、意識を保つ
不敵な笑みを浮かべながら、地面に這い蹲る私の元に近付いてくるブラッド
その手には、月光で光る1本のナイフ
風は強く吹き荒れ、その場にいる2人の髪がばさばさと揺らいだ
しっかりと握られたナイフが、私の元に振られようとする
私はダメ元で、身体の前で手を組んで攻撃に備える
それでも、刃物というものを向けられるだけでも怖かった私は、つい目を閉じてしまった
ナイフが振られ、キ-ンという金属音が鳴り響いた
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!