第53話

【第52話】
1,714
2020/08/12 14:56
私は被検体16番...

確か、以前地下室で見つけた紙にも、16番と書かれていた。
ブラッド
当時、違法な個性移植実験が影で行われていた。その被検体に選ばれたのは20名の赤子。
赤子ではまだ個性は発現していない者が多い。
そのため、移植も簡単だ
あなた

なら、私もその実験に赤ちゃんの時から関わっていたということ..?

ブラッド
そうだ
あなた

なら、有り得ない!!
嘘に決まってる!!

あなた

だって、私のお母さんとお父さんが許す訳ないもの!

私のお母さんとお父さんは、とても優しくて、とても暖かくて、私の1番のヒーローなんだもの。


そんなこと、するはずがない
あなた

それに、私はずっと普通に生きてきた..ユキトとパヒューマーの間で、楽しく..いつでも笑うことができてた!だから!

ブラッド
いや、ユキトとパヒューマーはお前の親じゃない
突如吹き荒れた風と共に、その言葉は私を包み込んだ
瞳から光が失われる感覚を、今初めて知った
ブラッド
考えてみろ
あなた

(考えたくないよ..)

何も、聞きたくないよ..

知りたくないよ..
ブラッド
個性は遺伝するはずだが、お前には遺伝していない
ブラッド
ユキトは雪、パヒューマは調香。
そしてあなた、お前は風
どこも類似していないだろう?
私はその事に納得してしまった

だけど、だとしたら、私は....
あなた

(何者、なの...?)

ブラッド
実験ではより強い個性を植え付けようとしていたため、お前を除くその他の赤子は皆犠牲となった
犠牲者はすぐに処分された
ブラッド
だからこそ、お前は特別な存在なんだ
ブラッド
それに、良く植え付けられた個性をここまでコントロールできるようになっている。
ブラッド
やっぱり、お前はすごいよ、あなた
あなた

........

風で揺らぐ髪をそっと耳にかけ、真っ直ぐに相手の目を見た。

ブラッドの目は血のような赤色で、月夜に照らされて少し光っていた


とても、綺麗だと思った。


その眼差しを、敵の立場として向けているのは本当に勿体ないと思う程
あなた

ねぇ

あなた

なら、ユキトとパヒューマーは、一体何者なの?

ブラッド
ユキトとパヒューマーは共同でその実験を探っていたんだ
ブラッド
だが、潜入した時には、もうお前しか残っていなかった
ブラッド
そして、何とかお前を死守して、実験から強制的に離脱させた
あなた

そっか..良かった..っ

傷だらけになりながら、実験を行っていた人達と戦う2人の姿を想像すると、泣きたくなった


だけど、それと同時に2人への大好きだという想いがより強まった。

2人は私の大好きなヒーローで、血は繋がっていないとしても、血とは別の暖かい何かで繋がった大切な家族だ..
ブラッド
良かった?
何故そう思うのかは全くわからんな
ブラッド
大切なことを伝えない無責任な親..いや、親ではなかったな
ブラッド
普通はそんな奴ら、呆れるだろう
あなた

ううん、そんな事ない

あなた

何かに必死になって行う人は、そうやって口だけで物事を言う人よりもずっと綺麗で素敵だもの!

あなた

私はお母さんとお父さんが大好き
その気持ち、今後も絶対に変わらないんだから!

ねぇ、お父さん、お母さん。

私ね、ヒーロー目指してるの
それでね、勝己くんや、たくさんの友達と出会ったの

そしてね、今、自分のことを知ったよ



悲しくて、逃げたいことだった..けど、逃げないよ


だって、お父さんとお母さんは逃げなかったんでしょ?

なら、私も逃げないよ。

だって、子供はお父さんとお母さんに憧れるんだもの


大好きだよ




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