私は被検体16番...
確か、以前地下室で見つけた紙にも、16番と書かれていた。
私のお母さんとお父さんは、とても優しくて、とても暖かくて、私の1番のヒーローなんだもの。
そんなこと、するはずがない
突如吹き荒れた風と共に、その言葉は私を包み込んだ
瞳から光が失われる感覚を、今初めて知った
何も、聞きたくないよ..
知りたくないよ..
私はその事に納得してしまった
だけど、だとしたら、私は....
風で揺らぐ髪をそっと耳にかけ、真っ直ぐに相手の目を見た。
ブラッドの目は血のような赤色で、月夜に照らされて少し光っていた
とても、綺麗だと思った。
その眼差しを、敵の立場として向けているのは本当に勿体ないと思う程
傷だらけになりながら、実験を行っていた人達と戦う2人の姿を想像すると、泣きたくなった
だけど、それと同時に2人への大好きだという想いがより強まった。
2人は私の大好きなヒーローで、血は繋がっていないとしても、血とは別の暖かい何かで繋がった大切な家族だ..
ねぇ、お父さん、お母さん。
私ね、ヒーロー目指してるの
それでね、勝己くんや、たくさんの友達と出会ったの
そしてね、今、自分のことを知ったよ
悲しくて、逃げたいことだった..けど、逃げないよ
だって、お父さんとお母さんは逃げなかったんでしょ?
なら、私も逃げないよ。
だって、子供はお父さんとお母さんに憧れるんだもの
大好きだよ
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!